『ムラマサ』の敵対関係から紡ぎ出されるCPといえば、やはりムラマサとクンニーラの複雑な感情の絡み合いを描いた作品が圧倒的に多いですね。私が最近読んだ中で特に印象深かったのは、『刃と呪いの狭間で』というファンフィクションです。この作品では、二人の因縁が単なる敵対関係を超えて、互いの強さに引き寄せられる心理描写が秀逸でした。最初は殺意しかなかった関係が、戦いを重ねるごとに『この男だけは理解できる』という共感へと変化していく過程が、じわじわと胸に迫ってきます。
特にクライマックス近くの、雨の中での決闘シーンは圧巻でしたね。『ムラマサ』本編では描かれなかった「もしも二人が手を組んだら」というif展開が、憎悪と尊敬の微妙なバランスの上に成立していて、読み終わった後も余韻が残りました。作者は武俠小説のような文体を巧みに使いこなし、刀と刀がぶつかり合う音までが聞こえてきそうな臨場感を出していました。
こういう敵同士の関係性を描く時、大切なのは単なるライバル関係に落とし込まないことだと思います。『刃と呪いの狭間で』は、二人が同じ
境遇でありながら全く異なる道を選んだという対称性を、情感たっぷりに掘り下げていました。最後のページをめくった時、憎しみと憧れが混ざり合ったなんとも言えない切なさがこみ上げてきて、しばらく他の作品が読めなくなるほどでした。