君と星を拾う夜明け前古川光奈子(ふるかわ みなこ)は、足掛け十年もの時をかけ、ようやく近藤千隼(こんどう ちはや)の隣に並ぶ権利を得たはずだった。
名前さえ覚えられていなかった片思いの相手から、彼が自らの口で認める「婚約者」という座を手にするまで。
だが、挙式をわずか半月後に控えたある日、光奈子はすべてを手放す決意を固めた。
「先輩、赤砂島支所への異動を希望します。リストに私の名前を加えてください」
光奈子は署名済みの申請書をデスクに置いた。その声は、不気味なほど穏やかだった。
モニター越しに担当者である先輩が顔を上げ、驚愕に目を見開く。
「君と近藤室長は来月結婚するんじゃなかったか?」