エプロンひとつで覚醒した婚姻結婚7周年の家族会食で、ずっと独身だった親友・藤井夏美(ふじい なつみ)が、いつの間にかSNSのアイコンがペアアイコンに変わっていることに気づいた。
「隠れて彼氏できたの?いつ紹介してくれるの?私がチェックしてあげるわ」
からかうように言った私、奥山莉奈(おくやま りな)に対し、夏美はただ笑って首を振り、まだ早いとはぐらかした。
その時、キッチンから夫の奥山拓海(おくやま たくみ)の声がした。
「おい、エプロンの紐を結んでくれないか?」
私が立ち上がる動きより先に、夏美が駆け寄り、背中から腕を回してエプロンを結んであげていた。
立ち尽くす私を見て、彼女は慌てて言い訳した。
「実家で母によく言いつけられてるから、体が勝手に動いちゃったの。気にしないで」
私は騒ぐこともなく、顔色一つ変えずに、最後まで客をもてなした。
客が帰り、テーブルを片付けている拓海に、私は静かに言った。「離婚しよう」
拓海はバンと食器を投げ捨て、私を睨みつけた。
「彼女がエプロンを結んでくれたくらいで、そこまで言うのか?」