妊娠中に癌宣告、縁起が悪いと言われた妊娠三か月の私、藍井和穂(あおい かずほ)は、結婚式の一週間前に子宮頸がんと診断された。ちょうどその頃、婚約者の江崎駿斗(えざき はやと)が長年想い続けてきた、初恋の相手である須崎佳純(すざき かすみ)は、彼の恋心に応えた。
私は駿斗に、子どもを守るために海外で治療を受けたいと懇願した。
だが彼は姿を見せず、ただ一億円を振り込んできただけだった。
「堕ろせ。まずは自分の体を治せ。
佳純がハイと言ったんだ。彼女は子どもを産んでくれる。分かってるだろ?俺の会社には健康な後継者が必要なんだと」
その夜、私はSNSで目にした。私が駿斗と共に必死に築き上げてきた会社の前で、佳純がプロポーズを受けている場面を。
【制服からウエディングドレスまで、ずっと一緒】
私は冷静にいいねを押してから、その夜のうちに家を出た。
三年後、治療を終えた私は、交通事故で入院している駿斗と再会した。
彼は私の服の裾を掴み、声を詰まらせながら言った。
「和穂、会いたくてたまらなかった。今になって君なしでは生きられないと分かった。
佳純のことは俺が悪かった。もう一度、俺のそばに戻ってくれないか」
私はただ微笑んで彼を押しのけ、首を横に振った。
「ごめん。夫と娘が、家で私の帰りを待っているの」