愛を灰にして、私は自由になる結婚式の前夜。
瀬戸景一(せと けいいち)から、余命宣告を受けた幼馴染の最期の願いを叶えるため、世界一周旅行に同行したいと言い出した。私、浅井梨花(あさい りか)に一ヶ月だけ待ってくれ、と。
同じ頃、母の浅井悦子(あさい えつこ)に深刻な心不全が見つかった。
母の唯一の願いは、自ら夜なべして縫い上げたウェディングドレスを着た私の花嫁姿を、この目で見届けることだった。
私は景一に、せめて式だけは挙げてから発ってほしいと、泣いて縋った。
彼は承諾した。しかし、式の中途で望月舞奈(もちづき まいな)と共に逃げ出した。
二人が空港で人目も憚らず抱き合い、口づけを交わす写真がSNSで瞬く間に拡散され、トレンドを埋め尽くした。
それを目にした母は、あまりのショックにその場で事切れた。一方、彼らはA国の都市へと飛び立とうとしていた。
舞奈のSNSが更新される。【大好きな人と、一番大胆なことをしたわ。私たちを祝福してね】
私は空虚な心地で母の遺骨が入った骨壺を抱き、震える指でコメントを打ち込んだ。
【末永くお幸せに】