思い出は灰と涙に結婚して五年目、西園柚葉(にしぞの ゆずは)は、四年間育ててきた息子の蒼真(そうま)が自分の実の子ではないことを、ようやく知った。
病院の医師のオフィスの外で、柚葉は偶然、夫の西園直樹(にしぞの なおき)と主治医の話を耳にした。
「西園さん、お子さんは特殊な血液型ですから、できれば早めに実のお母様を病院にお呼びください」
直樹は苦しげに眉間を押さえ、「分かった。できるだけ早く手配する」と答えた。
その瞬間、頭の中で「キーン」と耳鳴りがして、まるで雷に打たれたみたいに思考が真っ白になった。
実の母親?私こそが蒼真の母親のはずなのに――
柚葉は扉の外にしばらく立ち尽くしたまま、ふたりの会話の意味を必死に繋ぎ合わせた。
あの「一生お前を愛して守る」と誓った男は、結婚前から裏切っていたのだ。しかも、彼女の子どもをすり替えていた――