潔癖症の夫が不潔になった夫の瀬川廉(せがわ れん)には重度の潔癖症がある。だから私・瀬川知音(せがわ ともね)とは家では別室で寝て、洗濯物も別々に洗うというルールを作った。
私が触った食器すら、目の前でゴミ箱に捨て、バイ菌がついていると言って嫌がる。
だが結婚記念日のこの日、彼の一点の曇りもないアウディの車内から、破れた黒のストッキングと、口紅の跡がついた吸い殻が出てきた。
問い詰める私に、彼は袖口を整えながら淡々と答えた。目も合わせずに。
「女性社員を送っただけだ。うっかり落としたんだろう」
私は何も言わず、彼の会社でのライバル・神宮寺優也(じんぐうじ ゆうや)に電話をかけた。そこで初めて知った。彼が新しい女性アシスタント・小泉さくら(こいずみ さくら)を雇ったことを。
電話の向こうで、優也は意味深に笑った。
「奥さん、俺は何度も見てますよ。あなたの旦那さん、給湯室で女の子にケーキを食べさせて、手まで服の中に入れてましたからね。
その子、子供まで妊娠して、今まさに正妻の座を奪うことを目論んでいるらしいですよ」
電話を切り、私は結婚記念日のプレゼントをゴミ箱に捨てた。
廉、私たちはもう終わりだ。