兄の言う通りに死んだのに、どうして泣くの?兄が意地になって家を飛び出したあの日、私は土砂降りの大雨の中、必死で彼を探しに行った。
――まさか、落下した電線が頭上から落ちてくるなんて、思いもしなかった。
その事故で、私は両腕を永遠に失った。
医者になることを夢見ていた私は、その日から、皮肉にも「病院の終身患者」になった。
私は何度も自殺を図った。けれど、そのたびに家族が私を死の淵から引き戻した。
兄は私の前に跪き、涙ながらに懇願した。
「……俺が悪かった。頼む、死なないでくれ。お願いだ」
母は仕事を辞め、昼も夜も私に付き添ってくれた。
「あなたはお母さんの命なのよ。あなたが死んだら……お母さんはどうやって生きていけばいいの?」
父は私のリハビリ費用を稼ぐため、無理な残業を重ね、ついには海外へ単身赴任することになった。
――私はきっと少しずつ人生は良くなっていくのだと思っていた。
それなのに。
ようやく両足で両手の代わりをする生活に慣れ始めた頃、偶然に家族の会話を耳にしてしまった。
「……正直に言えばさ。最初から、あの時死なせておいた方が良かったんじゃないか」
その日の夕方、私はひとりでビルの屋上まで這い上がった。
風は強かった。鼻をすすったけれど、涙は出なかった。