愛はすでに過ぎ去った私、藤崎珠希(ふじさき たまき)が勤める病院で医療事故が起きた。
患者の家族が刃物を振り回し、私はとっさに夫の雅人(まさと)を押しのけようとした。
しかし、彼は私の手を強く掴み、後輩の夏木心未(なつき ここみ)をかばうため、私を前に突き出した。
その一刀が私の腹を貫き、まだ小さかった命も失われた。
同僚たちに涙ながらに救急治療室へ運ばれる中、雅人は私をベッドから引き離し、厳しい声で言った。
「まずは心未を救え。もし何かあったら、全員クビにしてやる!」
医師仲間はショックと怒りで叫んだ。
「藤崎、お前は正気か? 夏木はただの軽い怪我だ。お前の妻の状態のほうがよっぽど深刻だ!」
血が止まらない腹を押さえ、私はゆっくりと頷いて、「彼女を助けて」と言った。
雅人、これで貸し借りはなしだね。