月光は霧のように消える禁欲的な名門御曹司と結婚して七年、神谷美月(かみたに みづき)はついに心が冷え切り、この家を離れることを決意した。
「システム、七日後に私を元の世界に戻して」
美月は顔を上げ、向かいのビルの広告スクリーンに映る映像を見つめ、胸が締め付けられるような思いに駆られた。
次の瞬間、彼女は迷いなくシステムを呼び出す。
【宿主様、ミッション終了を確認しました。帰還システム起動中】
しばらくすると、美月の頭上にカウントダウンが表示された。
【帰還システム起動成功。宿主様は七年前に攻略ミッションを完了しましたが、世界からの離脱が遅れたため、交通事故死としての離脱となります。残り時間:6日23時間59分……】