愛は消えゆく「清水文乃(しみず ふみの)、本当に黒川陽斗(くろかわ はると)を華国科研機密プロジェクトに推薦するつもりなのですか?
このプロジェクトは期間が10年にも及びます。君たちは長いあいだ離れ離れになりますよ」
プロジェクト責任者は私を見つめ、その目には驚きと疑いが満ちている。
社内では、私と陽斗は誰もが認める模範カップルだ。あの時、陽斗が私を助けるために、全身の血のほとんどを輸血した話は今も語り継がれている。
スマホに映る監視カメラの映像には、陽斗と後輩が私たちのベッドで絡み合う姿が映っている。
私は迷わずうなずく。
「ええ、離れたいからです」
陽斗が私を裏切ることを選んだなら、私を失うという代償を払わなければならない。
去るべきなのは彼であって、私じゃない。