「くるおしい」感情を掘り下げた作品で思い浮かぶのは、まず『告白』だ。主人公の教師が復讐に取り憑かれる過程は、読むたびに背筋が凍る。普通の人間がどうしてここまで狂気に近づけるのか、その心理描写の巧みさに圧倒される。
あるいは『罪と罰』のラスコーリニコフも忘れられない。殺人後の精神の
崩壊が段階的に描かれ、自分が正しいと信じたことがいかに脆い基盤の上に立っていたかを思い知らされる。特に雨の日の妄想シーンは、狂気と現実の境界が溶けていくようでゾッとする。
最近では『陽気なギャングが地球を回す』シリーズの狂気がユーモアと混ざり合った表現も印象的だった。狂気の裏にある切なさや孤独を感じさせる手腕は、他作品とは一線を画している。