現場では独特の鼓動が知らぬ間に伝播していく。僕は編集席でそれを何度も目撃したことがある。昼のチェックでカットが決まった瞬間、画面の端から小さな歓声が漏れ、次の瞬間には周囲の顔がぱっと明るくなる。アニメ制作の『
武者震い』は言葉で伝えるよりも、ふとした身振りや息遣い、タイミングを合わせた拍手で共有されることが多い。
例えばスタッフ全員で観る最初のオンリー試写では、音と映像が合致した瞬間に自然と息が止まり、その後に続く拍手や笑い声が一斉に場を満たす。僕にとってはその瞬間が、長いデスクワークや修正の連続を越えて「やっと届いた」と実感する時だ。それはただの成功の確認ではなく、同じ方向を向いた仲間たちと感情を同期させる合図になっている。
終わってからの短い沈黙や、控室での軽いからかい、スタッフ間で交わされる短いメッセージのやり取り──そうした小さな断片が積み重なって、次のモチベーションを生む。僕はその余韻を大事にして、次のカットに向かうためのエネルギーに変えていく。現場の武者震いは、誰か一人のものではなく、空気ごと共有するものだと感じている。