資料を追いかえすと、名前の背後にある意図がひとつの線でつながる瞬間があって、それがけっこう楽しいんです。設定資料をどう読み解くかという観点で言うと、まず着目すべきは表記の仕方です。カタカナ表記の『
ウルス』なら外来語やラテン語系の影響を強く匂わせますし、漢字が当てられているならその字義が手がかりになります。さらにルビ(ふりがな)が設定資料や台詞でどう振られているかも重要で、そこが作者の意図をストレートに示していることが多いです。自分も何度か設定集を読み返して、こうした小さな手がかりを拾う作業が大好きになりました。
音そのものの由来を考えると、いくつか有力な候補が浮かびます。ラテン語の 'ursus'(クマ)や英語の派生語はまず思い浮かぶところで、作品内で“獣”や“守護”といったモチーフがあるなら説得力があります。また、ドイツ語圏の 'Urs'(男性名)や、スラヴ系の 'Uroš' に近い響きもあって、いずれも“古さ”“原初”といった印象を与えやすい。さらに言語学的に見ると、接頭辞の 'ur-' は「元の・根源的な」といった意味合いを持つため、性質や役割が“原初的な存在”であるなら非常に合致します。こうした語源候補を、作品の世界観や象徴と照らし合わせると、名前が単なる響き以上の意味を持っていることが見えてきます。
設定資料の図版やデザイナーコメントも見逃せません。紋章や色彩、装備のデザインが熊や原始的な力を想起させるなら、『ウルス』がそうしたイメージを意図して付けられた可能性が高いですし、逆に静寂や孤高を表す記述が多ければ“孤高の存在”としての命名だとも読めます。台詞回しや歴史年表に名前の由来を示唆する逸話がちりばめられていることもあり、初出時の呼称とその後の派生(愛称や蔑称)を追うことで、社会的地位や評価の変遷まで想像できます。自分が特に面白いと感じるのは、作者が別言語風の響きを借りつつ、その語根に作品内の象徴を重ねているケースで、そういうときは深読みがとても楽しいです。
最終的には、設定資料の総体的な証拠を当てはめていく作業が決め手になります。表記(カタカナか漢字か)、ルビ、語源的な候補、デザイン・象徴表現、作中の使われ方の5点セットを比べれば、かなり説得力のある解釈が組み立てられます。個人的には『ウルス』という名前は“外来語的な響き+原初的・守護的なイメージ”を狙って付けられていることが多いと感じていて、そう読むとキャラクターや種族に込められたテーマがより鮮やかに浮かび上がるんですよね。