見つけたときの衝撃は忘れられない。
『Florentine Codex』は、
ケツァルコアトルに関する一次資料を読みたい人にとって欠かせない宝物のような存在だ。ベルナルディーノ・デ・サアグンがナワトル語話者の語りを集め、後世のために体系化したこの書は、神話、儀礼、図像説明が豊富に含まれている。翻訳と注釈を付けた
アーサー・アンダーソンとチャールズ・ディブルの版は、読みやすさと学術性のバランスが良く、原資料に忠実な描写が多い。
読み進めると、ケツァルコアトルが政治的象徴として、また文化的変容を語るメタファーとして何度も登場するのが分かる。私は初めて読んだとき、伝承が当時の社会構造や儀礼と密接に結びついていることに驚かされた。学術的な注釈を追いながら伝承の「声」を直接感じられるので、学びの深さが違う。
史料を素直に受け取りつつ、その背景にある口承と編集の過程を想像するのが好きな人には特に薦めたい。ケツァルコアトル像をちゃんと「土台」から知りたいなら、まずここに触れるのが一番だ。