古文献を紐解くと、
サイクロプスの起源には二重の系譜が見えてきます。
まず最も直接的に「起源」を語るのはヘシオドスの叙詩で、ここでは三人の古来の巨人──ブロンテス、ステロペス、アルゲス──がウラノスとガイアの子として描かれます。『Theogony』では、彼らはタイタンたちと同様に宇宙生成の中で生まれ、ウラノスに
囚われた後に解放され、やがてゼウスのために稲妻を鍛える役割を担う、いわば「原初の工匠」としての一面が強調されます。
一方で、系統整理や異伝をまとめた文献も重要です。古代の簡潔な目録的著作である『Bibliotheca』は、ヘシオドス系の起源説とホメロス系の物語的表現を両方取り上げ、サイクロプスの系譜や子孫譚、ポリュペーモスに関する記述の断片を補強します。私はこの二段構えが面白いと思っていて、原初的な鍛冶師としてのサイクロプス像と、
叙事詩的に人間社会と衝突する孤立した巨人像が、異なる資料で並存していることが古代神話の豊かさを示していると感じます。