サイクロプスの描写は作品ごとに実に顔つきが違っていて、読むたびに驚かされる。僕がまず目につけるのは出力の“性質”だ。'Uncanny X-Men'系の古典的なコミックスでは、光線は単なるレーザーではなく「衝撃波」のように描かれることが多い。視覚的には赤いビームでも、作者や時代によっては熱で焼き切るタイプではなく、ぶつけて押し流す力、つまり対象を吹き飛ばすコンカッシブ(打撃)エネルギーとして説明されることが多い。
同じシリーズ内でもコントロールの描写は変遷している。初期は彼自身がまったく制御できない悲劇的設定が強調され、ゴーグルやバイザーで封じ込められる道具として扱われる場面が多かった。のちに扱いが洗練されていくと、バイザーの材質(ルビー・クォーツなど)やピンポイント射撃、角度をつけて連携攻撃に使う戦術的描写が増えた。僕には、その変化がキャラクターの内面描写の深化と連動しているように感じられる。
さらに興味深いのは起源やメカニズムの説明だ。ある号では彼の目が異次元に繋がっているといったSF的な解釈が導入され、別のエピソードでは単純に体内エネルギーの放出と片付けられる。こうしたバリエーションがあるからこそ、サイクロプスは単なるビーム使いにとどまらず、作家の視点や物語のテーマに応じて能力の“象徴性”まで変わり得る。読んでいて飽きないし、議論の余地が尽きないところが魅力だと思う。