3 回答
『チャイニーズゴーストストーリー』のラストシーンこそ、心に残る瞬間だ。寧采臣と小倩の別れは、儚さと美しさが交錯する。人間と幽霊という存在の隔たりを越えた感情が、あの静かな湖畔で結晶化する。特に小倩が鏡に映る自分を見つめるシーンは、存在の不確かさと愛の確かさを同時に表現していて、何度見ても胸が締め付けられる。
この作品の真骨頂は、ファンタジー要素と人間ドラマの絶妙なバランスにある。例えば、燕赤霞の剣舞シーンはアクションとしても見事だが、彼の孤独さも滲ませている。妖怪退治のエンタメ性と、登場人物たちの内面の影が共存しているからこそ、観る者は単なる怪談以上のものを感じ取れるのだ。音楽も含めた総合芸術としての完成度が、このシーンを特別なものにしている。
80年代の香港映画らしい色彩が炸裂する、蘭若寺での初対面シーンが忘れられない。小倩の赤い衣が闇に浮かび上がる様は、まるで水墨画に突然彩色が加わったようだ。当時の特殊効果は現在から見れば粗いが、逆にそれが素朴な味わいを生んでいる。寧采臣のうぶな反応と、小倩の妖艶な振る舞いの対比が、後の展開への期待を巧妙に誘う。
この作品の面白さは、古典的な怪談の枠組みに現代的な恋愛観を織り込んだところにある。書生と女幽霊という設定自体は昔からあるが、二人の関係性の描き方には当時の新鮮さが感じられる。特に小倩が自らの意思で寧采臣を助けようとする姿は、受動的な幽霊像を打ち破っていて、キャラクターに深みを与えている。
樹木の精が襲来するシーンの不気味さは格別だ。伸びてくる枝が生々しく、今でも時々夢に出てくるほど。しかし怖さの中に、自然への畏怖のような哲理も感じられる。姥姥の声の演技が絶妙で、あの不気味さを引き立てている。
こうした妖怪描写の背後には、中国民間伝承の豊かさがある。単なる悪役ではなく、長い年月を経た存在としての重みが感じられる。特殊メイクのディテールも当時としては力が入っており、ファンタジーとホラーの境界を軽やかに行き来する演出が光る。