ト書きは小説の舞台裏を支える隠れた力だ。登場人物の動きや
情景を的確に伝えることで、読者の想像力をかき立てる。例えば、『君の名は。』の小説版では、主人公たちの微妙な距離感がト書きで表現され、映画とは違った深みを生んでいる。
重要なのは、ト書きを「説明」ではなく「描写」として扱うこと。キャラクターの仕草や視線の動きから心理状態をにじませたり、季節の移り変わりを背景に溶け込ませたりすると、自然な流れが生まれる。ただし、やりすぎは禁物。読者が自分で想像する余地を残すバランス感覚が求められる。
効果的なのは、ト書きにキャラクターの特徴を織り込む方法だ。例えば、落ち着きのない人物なら「指先でテーブルをコツコツ鳴らしながら」といった具合に、動作を通して性格を浮かび上がらせられる。こうした積み重ねが、紙面上の人物に命を吹き込んでいく。