名前のない結婚式招待状結婚式の前夜、招待状に印刷されていたのは、婚約者の桐生蒼介(きりゅう そうすけ)と、彼の女性アシスタントの名前だった。
アシスタントの桜井美波(さくらい みなみ)を問い詰めると、彼女は泣きながら、誤って新婦の名前を自分の名前にしてしまったのだと言い訳をした。
その後、蒼介から電話がかかってきた。
「浅野紬(あさの つむぎ)、たかが名前を間違えたくらいで、そんなに大騒ぎすることか?」
彼は私を心が狭く、嫉妬深く、一人の女性社員さえも許容できない人間だと激しく罵った。
5分後、美波はインスタを更新した。そこには、あの招待状と、彼女と蒼介が親しげに寄り添う写真がアップロードされていた。
キャプションには【社長が、どんな大きなミスをしても俺がカバーするから心配するなって言ってくれた】とある。
以前の私なら、女性社員からこんな挑発を受ければ、絶対に蒼介に迫って解雇させていたはずだ。
しかし今回、私は本当にどうでもよくなっていた。