場面が切り替わった瞬間、僕は音の重なりで息を飲んだ。
その瞬間に流れる
ニーナのテーマは、通常は彼女が姿を現す“決定的な瞬間”に合わせて使われることが多い。激しい場面でも戦闘開始の導入として低弦と金管が重なり、テーマの冒頭の短い動機がぶつ切りに提示される。その切迫感は彼女の過去に根ざした罪悪感や責任感を象徴していて、視覚的な行動より先に心の動揺を伝える役割を果たす。
逆に、テーマのアレンジが変わるときは物語の重心が変わったときだ。孤独な回想ではピアノとソロヴァイオリンだけが残り、動機は旋律として伸びる。決断や覚悟の場面ではフルオーケストラに転じ、同じ旋律が和音で満たされることで“彼女がもう一人ではない”という意味合いが付与される。そうした変化を追うと、楽曲は単なるキャラクターソング以上に、物語の道しるべになっているのがわかる。
響き方の微妙な差でニーナの立ち位置が瞬時に伝わるところが好きだ。音の細部が感情の機微を担っていて、毎回聴くたびに新しい発見がある。