5 Answers2026-02-02 17:51:25
フォークナーの『アブサロム、アブサロム!』は、南部の没落した名家サトペン家を中心に、人間の欲望と破滅を描いた重厚な叙事詩だ。複数の語り手が異なる視点から物語を紡ぐことで、真実が相対化されていく手法が特徴的で、読者はまるでジグソーパズルを解くように物語に向き合うことになる。
特に興味深いのは、トーマス・サトペンが『設計』と呼ぶ野望の崩壊過程だ。彼が築こうとした『完璧な家系』は、人種差別や近親相姦といったタブーの連鎖によって瓦解していく。この作品は単なる家族の悲劇ではなく、アメリカ南部が抱える歴史的トラウマの暗喩として読むべきだろう。最後に残るのは、過去に囚われた人間たちの無力さと、語り継がれること自体が持つ暴力性だ。
5 Answers2026-02-02 18:38:10
フォークナーの世界観に浸るなら『響きと怒り』が最適だと思う。複数の視点から語られる物語は最初は混乱するかもしれないけど、読み進めるにつれてその複雑さが魅力に変わっていく。
特にベンジーの章の独特な時間感覚は、フォークナーの文体の真髄を感じさせてくれる。登場人物の心理描写が細やかで、読むたびに新たな発見があるのもこの作品の特徴。最初はざっくりと流れを追い、二度目に細部を味わうのがおすすめ。
5 Answers2026-02-02 06:03:19
翻訳の質を考えると、野崎孝さんの仕事は特に際立っています。『響きと怒り』の訳は、フォークナーの複雑な文体を見事に日本語に落とし込んでいて、原作の持つリズムやニュアンスを損なわないように配慮されています。
野崎訳の特徴は、長い文章の処理が巧みな点。フォークナー特有の延々と続く文を、日本語として自然に読みやすくしながら、原作の息苦しいほどの緊迫感を保っているんです。特にベンジャミンの視点の章など、難解な部分の訳文は、他の翻訳と比べてみるとその違いがよくわかります。
5 Answers2026-02-02 06:44:48
フォークナーの作品には、人間の苦悩と救済を深く掘り下げた普遍的なテーマが詰まっています。『響きと怒り』や『アブサロム、アブサロム!』では、時間の非線形的な語り口や複雑な心理描写を通じて、南部の歴史と個人の運命を重層的に描き出しています。
彼の文体は決して読みやすいものではありませんが、その難解さこそが人間の意識の流れを忠実に再現していると言えるでしょう。ノーベル賞委員会は、こうした文学的な革新性と、戦後の混乱期における人間性への深い洞察を高く評価したのだと思います。特に1949年の受賞時には、世界が求めていた「人間の栄光」についてのメッセージが、彼の作品に強く表れていたのでしょう。