モトサヤ作品の魅力は、何気ない会話の中に潜む深い意味にある。'午後の窓辺'で
兄妹が交わす平凡なやり取りから、家族の暗黙の緊張関係が浮かび上がる様は見事だ。背景描写が最小限なのに、登場人物の息遣いまで伝わってくるような臨場感がある。
特に印象的なのは時間の使い方で、過去と現在を行き来する構成が多いが、決して混乱させない絶妙なバランス感覚がある。'記憶の渦'では、時間の流れを意図的に歪めることで、主人公の心理状態を視覚化していた。モトサヤは読者を信頼し、全てを説明せずに隙間を残す。その隙間を埋める過程で、作品への没入感が生まれるのだ。
社会派的なテーマを扱いながらも、押し付けがましくないのも特徴だ。重いテーマを軽やかに、軽いテーマに突然深みを与える逆転の手法は、読むたびに新たな発見がある。