誰かの人生を背負う人間の内面は、一枚の絵のように単純ではない。物語を書くとき、その複雑さを平板な「優しい人」「冷たい人」といった二項対立で済ませると、読者はすぐに感情移入を失ってしまう。私が心掛けるのは、
後見人の心理を常に二面性を持たせて描くことだ。義務と愛情、保護と支配、過去の傷と未来への期待が同居する瞬間を丁寧に拾い上げると、人間味が出る。
具体的には、内的独白と行動をずらして見せる手法が有効だと思う。頭の中では「こうあるべきだ」と繰り返していても、無意識に取る些細な振る舞いがそれと矛盾している──例えば、鍵のかけ方や届いた手紙への反応、子どもの名前を呼ぶときのためらいなど。そうしたディテールを積み重ねると、読み手は後見人の本当の感情を推測し、人物が血の通った存在になる。ほかにも、回想を断片的に挟んで後見人の過去の決断やトラウマを匂わせると、現在の行為がなぜそのように歪むのか説明できる。
また、『ハリー・ポッター』のダンブルドア的な「大きな目的のために小さな人の事情を犠牲にする」タイプと、日常の細やかな配慮で相手を支えるタイプは、どちらも後見人として魅力的だが描き方は別物だと感じる。前者は倫理的ジレンマと秘密による孤独を、後者は疲労と自己犠牲のリアルな疲弊を中心に据えると説得力が出る。結末に至る変化も忘れずに。自己正当化が崩れる場面や、逆に覚悟が確定する瞬間を用意しておくと、読後感が深まる。そんなふうに積み上げれば、後見人の心理は単なる説明ではなく、生きた人間の苦悩として読者の胸に残るはずだ。