昔から細部にこだわる性分のせいか、長いテキストを読むとつい「ここはこう直せる」と考えてしまう癖がある。その観点から言うと、
無粋に感じる描写を洗練させるための第一歩は“削る勇気”だ。余計な修飾語や説明の重複は、しばしば作者の不安を映す鏡になる。僕は原稿を直すとき、まず形容詞や副詞に蛍光マーカーを引いて、本当に必要なものだけを残す作業をする。そうすることで、語感が自然に研ぎ澄まされる。
次に、具体性を優先することが大切だ。抽象的な感情表現をそのまま置く代わりに、小さな観察を入れる。例えば「悲しかった」ではなく、手が震えた、靴紐に気を取られた、という具合に場面に即した所作や対象を描くと情感が伝わりやすくなる。視点のフィルター言葉(〜ように見えた、〜と思った、など)は可能な限り減らし、読者に体験を託すつもりで書き換えると良い。
最後にリズムを整える習慣を勧めたい。長短の文を混ぜ、重要な一行は単独で置いて余韻を作る。声に出して読むと、冗長な箇所やくどい比喩が耳に残るから、推敲の際には必ず声に出す。ここまでやると、表面的な
美辞麗句だけで飾られた文章が、内側から光を放つように変わることが多い。個人的には、'百年の孤独'のような一見華やかな作品でも、裏にある厳しい取捨選択があることを思い出すと心強くなる。