冒険譚に心が躍るタイプなので、主人公が地図もない世界を歩き回って少しずつ強くなる話には目がない。僕が求めるのは単純な強さの描写だけじゃなく、旅の仲間関係や失敗、疲労感、そして街やダンジョンの匂いまで感じられるような作品だ。ここではそういう“
冒険者らしさ”が強く出ているライトノベルを、気分別にいくつか挙げてみる。読みやすさや世界観、成長の描き方で選んでいるので、まずは気になる一冊を手に取ってみてほしい。
まず王道で入りやすいのが『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』。ベル・クラネルの純粋な成長譚と、神々や街のギルドといった冒険者社会の描写に親しみが持てる。戦闘の描写がテンポ良く、仲間が増えていくワクワク感が強いので、冒険者ものの入り口として非常にオススメだ。一方で笑いが欲しい時には『この素晴らしい世界に祝福を!』を勧める。カズマとそのトラブルメーカーな仲間たちの掛け合いが爽快で、冒険者らしい失敗や報酬の獲得がギャグとして描かれるので気楽に読める。
もう少し現実味のある描写が好みなら『灰と幻想のグリムガル』を推したい。戦闘の泥臭さや食事、死の重みがしっかり描かれ、冒険者の日常の苦労が胸に響く。感情移入しやすく、キャラクターの成長が丁寧に描写されているので、重ための物語を求める人にはたまらないはずだ。ダークで職業的な面を見たい人には『ゴブリンスレイヤー』がある。タイトルから受ける印象以上に、ギルドや任務の描写、パーティ運営の現実性が際立っている。戦術や装備調整、冒険者の倫理観がテーマになっている点も興味深い。
最後に、世界構築とパーティ運営を楽しみたいなら『ログ・ホライズン』や、転生系でじっくりスキルを磨くタイプの『無職転生』も外せない。どちらも冒険者としての視点が強く、仲間と共に町を作ったり生き抜いたりする過程が読み応えある。個人的にはまず『ダンまち』で王道の楽しさを味わい、それから『グリムガル』で深みを、気分転換に『このすば』で笑う、という組み合わせが気に入っている。冒険の香りがする一冊に出会えれば、ページをめくる手が止まらなくなるはずだ。