論破という言葉にぎょっとする人もいると思うけれど、実際に学ぶときに役立ったのは「反論の技術」ではなく「議論を組み立てる技術」だと気づいたことだった。まずは相手の主張を丁寧に分解して、前提・根拠・結論の流れを紙に書き出す習慣をつけた。曖昧な言葉や暗黙の前提を見つけるのが上達の鍵で、その作業だけで相手の論理の弱点が見えてくる。
次に、証拠の種類を区別する癖をつけた。統計や一次資料、目撃談、それぞれの信頼性や適用範囲を考えることで、単なる感情的反論よりも説得力のある反証ができるようになる。実際の練習方法としては、友人とロールプレイをして互いに立場を交代する、議論録を録音して後で自分の論理の癖をチェックする、スニペット的に短く主張と根拠をまとめる訓練を続けることが有効だった。
最後に倫理面の自覚も大事だと思う。強引に相手をねじ伏せることは一時的な勝利を生むかもしれないが、信頼を失う。例として観察したのは、推理の組み立てが秀逸な作品『シャーロック・ホームズ』で、相手の前提を明示して理詰めで示すやり方は説得と信用を同時に得ることが多い。私自身、この順序で練習してきて、相手と関係を維持しながら論理を通せるようになった。