スクリーンに広がる無機質で鮮やかな世界を最初に見たとき、映像技法の細やかさに息を飲んだのを覚えている。制作側はまず3DフルCGを基軸に据えながら、キャラクターをややデフォルメしたレンダリングで表現することで、写実と記号性のバランスを取っている。テクスチャやマテリアル表現は非常にリアルで、金属やプラスチックの質感、微細な汚れやスクラッチが景観に深みを与えている。これにより背景は写真のように説得力を持つ一方で、人物はストーリー性を損なわない存在感を保っている。
モーションについては、モーションキャプチャと手付けアニメーションが巧みに混在している印象がある。人間の微妙な体重移動や自然なリズムはモーションキャプチャで得つつ、感情表現や演出的な誇張は手で補完することで、視聴者の感情移入を誘っている。またカメラワークは映画的で、長回しの中にクローズアップを差し込むような編集が多用され、空間の広がりや人物の孤立感を視覚的に強調する。ライティング面では、硬質なキーライトとソフトな環境光の対比、ボリューメトリックライト(光の層を見せる手法)や微細な粒子表現が用いられ、未来都市の冷たさと時折差し込む温かさを両立させている。
色調やグレーディングも重要な役割を果たしている。寒色のトーンで組まれた日常空間と、オーガニックな要素が絡む場面での暖色の対比が視覚的な物語を補強する。そのほか、被写界深度やレンズフレア、ゴースト、クロスフィルターの微妙な活用が“フィルムらしさ”を与え、観る者に物語の質感を刷り込む。個人的には、こうした技術の積み重ねが『
エデン』の世界を単なる背景以上の“生きた場所”にしていると感じる。映像表現と物語がしっかり噛み合っている点が、最も印象に残った部分だ。