媚びる性格のキャラクターの内面を掘り下げた作品といえば、『三月のライオン』の川本あかりが印象的だ。彼女は周囲に気を遣いながらも、自分の居場所を探す過程で繊細な成長を見せる。家族というテーマと絡めて、"媚び"の裏にある孤独や承認欲求が自然に描かれるのが巧みだ。作中で彼女が
将棋盤を囲むシーンでは、無意識のうちに相手の顔色をうかがう仕草までが心理描写の一部となっている。
また『NHKにようこそ!』の佐藤達広も、社会適応のために媚びへ走る青年の心理を痛切に表現している。ネットゲームに依存する描写など、現代的な孤独と表裏一体の"媚び"が特徴的で、コミカルなタッチの中に人間の根源的な不安がにじむ。特にアルバイト先での「いい人キャラ」演じる場面は、読むほどに胸が締め付けられるリアリティがある。
ゲーム作品なら『ペルソナ5』の坂本龍司が興味深い。表面上は陽気なムードメーカーだが、大人への不信感から過剰に媚びる瞬間があり、それがストーリー後半の葛藤につながっていく。RPGという形式を活かし、選択肢によってはキャラクターの本音と建前のギャップが浮き彫りになる仕掛けも秀逸だ。