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面白いのは、武蔵が晩年に描いた絵画からも剣術の思想が感じられる点だ。『枯れ木鳴鵙図』のような作品には、余計なものを削ぎ落とした緊張感があり、これが『無駄のない動き』を重んじた剣術と通じる。
『五輪書』の最後にある『空の巻』では、固定観念を捨てて自由になる重要性が説かれている。勝つための技術から、生き方そのものへの昇華――そこにこそ真の特徴があるのかもしれない。
宮本武蔵の剣術は『五輪書』に記された『二天一流』が核心で、両手に刀を持つ独特のスタイルが特徴的だ。
通常の剣術が片手での操作を基本とする中、武蔵は二刀を駆使することで攻守の幅を広げた。『地・水・火・風・空』の五つの巻からなる理論体系は、単なる技術論ではなく戦略や精神性までを含む。
特に『水の巻』で説かれる、相手の動きに自然に合わせるように斬り込む発想は、後の日本の剣道にも影響を与えている。勝負に拘泥せず、状況に応じて柔軟に変化する姿勢が、彼の実戦主義をよく表している。
『兵法家』としての側面を考えると、武蔵の真髄は剣術そのものより『戦い方の哲学』にある。『相手の心理を読む』『地形を利用する』といった記述からは、単純な腕力勝負を超えた知恵が見える。
有名な巌流島の決闘でも、わざと遅刻して相手を苛立たせたとか、太陽の位置を利用したとか、様々なエピソードが残っている。『二天一流』という名称には『二つの要素を一つに統合する』という意味が込められており、技術と精神の調和を追求したことが
窺える。
二刀流というと華やかなイメージがあるけど、武蔵の場合はむしろ合理性が際立ってるよね。相手の剣を片方の刀で受け流しながら、もう片方で瞬時に反撃する連携プレーは、実際の試合映像を見ると驚くほど無駄がない。
『五輪書』に『千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす』ってある通り、単なる型の練習ではなく、あらゆる状況を想定した訓練を重視していたみたい。武器の長短を使い分ける技術や、間合いの取り方についての詳細な分析も、現代の格闘技理論に通じるものがある。