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翻訳の世界で『有り体な表現』を英語に置き換えるなら、『straightforward expression』や『matter-of-fact way of speaking』が近いでしょう。特にキャラクターのセリフを訳す時、このニュアンスをどう保つかが腕の見せ所です。
『進撃の巨人』のリヴァイ兵長の台詞を例に取ると、日本語のぶっきらぼうな言い回しをそのまま英訳するとキャラクター性が失われてしまいます。代わりに『tough love』的な短いフレーズや、敢えて文法を崩した言い方で攻撃的な性格を表現しています。文化背景を考慮しつつ、原作の歯切れ良さをどう再現するかが翻訳者の挑戦ですね。
面白いことに、『有り体』な表現は逆に翻訳しやすい場合もあります。比喩や詩的表現より直截な言葉の方が、文化依存度が低いからです。ただし、丁寧さの度合いや年長者への話し方など、日本語独自のニュアンスをどう訳すかは永遠の課題と言えるでしょう。
海外ドラマの日本語吹替版を見ていると、英語の『cut to the chase』的な台詞が『単刀直入に言うと』と訳されることが多いです。この逆パターンも参考になります。
作品翻訳で重要なのは、『有り体さ』の裏にある感情を見極めること。『鬼滅の刃』の嘴平伊之助の乱暴な口調は、英語版では文法を意図的に崩すことで野生児らしさを表現。一方で『スパイ・ファミリー』のロイドの事務的な話し方は、軍人らしい簡潔な命令形に近い訳語が使われています。
翻訳は単なる言語変換ではなく、キャラクターの背景や作品の雰囲気を別の文化圏で再構築する作業だということがよく分かります。
英語圏のファン向け翻訳で気をつけているのは、『有り体』な表現を『blunt』や『frank』と訳しすぎないことです。例えば『ジョジョの奇妙な冒険』の空条承太郎の「やれやれだぜ」は、キャラのクールさを保ちつつ『Good grief』と訳されています。
大事なのはコンテキストの再構築です。日本語の短い命令形は英語では主語と動詞を補う必要があり、『早くしろ』が『Hurry up』になるように、文構造そのものが変わります。それでもキャラクターの威圧感や緊急性を失わないため、声優の演技や場面描写と連動させた訳語選びが不可欠。
翻訳ソフトが発達した今でも、こうしたニュアンスの調整は人間でないと難しい。特に少年漫画の熱血台詞と青年漫画の渋いセリフでは、同じ『有り体』でも訳し分けが必要です。