懐かしい旋律について少し掘り下げてみるよ。子どものころからよく耳にする『
森のくまさん』は、実は日本オリジナルのメロディではなく、英語圏のフォークソングを元にした翻訳・編曲作品だ。原曲としてもっともよく挙げられるのは英語の子供歌『The Other Day I Met a Bear』で、歌い出しの情景やメロディの流れが日本語版とよく似ている。英語版の歌詞は「The other day, I met a bear, out in the woods, a great big bear…」という具合で、こちらも森で熊に出会うエピソードをコミカルに歌っている点が共通しているんだ。
自分の調べた限りでは、英語の原曲は伝承歌(トラディショナル)に近く、正確な作詞者や作曲者は不詳とされることが多い。キャンプソングや童謡としてアメリカやイギリスなどで広く歌われ、地域ごとに歌詞やフレーズが変化して伝わってきたという背景がある。だから日本で知られる『森のくまさん』のメロディが特定の近代作曲家の作品というよりは、民謡的な流布の中から来ていると理解している人が多い。
一方で日本語の歌詞については、作詞者がはっきり示されないケースが一般的だ。教科書や童謡集では「作詞:不詳/作曲:アメリカ民謡」といった表記が見られることがあるし、歌詞もレコードや絵本、ご家庭での伝承を通じて微妙に変わってきた。自分が知る限り、誰か一人の名前が広くクレジットされているわけではなく、翻案や口承の中で日本語化されたものが定着した、というのが実情だ。ちなみに英語圏で似た内容の別の歌『The Bear Went Over the Mountain』と混同されることがあるから、この点は注意が必要だよ。
著作権面を気にするなら、原曲が伝承歌であるため原則としてメロディ自体はパブリックドメインの扱いになっている場合が多い。ただし近年の編曲や新しい歌詞、特定の録音には著作権が発生するので、教材や商用利用の際はその版元やアレンジの権利状況を確認するのが無難だ。個人的には、この種の民謡系の曲が国を越えて子どもたちの遊び歌になっているのがとても面白いと思っていて、『森のくまさん』は日本語化によって独自の親しみやすさを獲得した好例だと感じている。どう聴いても、歌っても楽しい一曲だね。