資料を丹念に読み比べる癖があるので、ドラマの宰相衣装を史実と照合する作業がクセになっている。色使いや
紋様、腰回りの装飾など、官職を示す要素は多くの場合再現されているが、布の素材感や縫製の細かさには差が出やすい。中国の歴史劇で人気のある'琅琊榜'では、役職の象徴となる飾りや配色に時代考証の跡が見えるが、画面映えを優先して光沢やコントラストが強調される傾向がある。
私の経験では、撮影の制約(連続した撮影や洗濯の必要性、照明での映り方)から、耐久性のある現代的な裏打ちが使われることが多い。舞台上の立ち回りを重視する演出が加わると、袖の長さや裾さばきが調整され、結果として“見た目は古風だが作りは現代的”という中間形になる。そうした妥協点を見つけると、衣装班と美術の苦労が伝わってきて、さらに作品を面白く感じる。