泥濘の愛父の死をきっかけに、私は指揮官である夫と離婚し、この山あいの村に生涯を捧げることを決めた。
初日、私は夫を騙して離婚申請書に署名させた。
五日目、勤めていた職場に退職願を差し出した。
七日目、心を込めて料理を作り、友人たちとの別れの宴を開いた。
蒼井遼真(あおい りょうま)は眉をひそめ、「なぜ彼女の好きではない料理をわざわざ作るんだ」と私を責めた。
私は立ち上がり、彼の幼なじみに杯を捧げた。
――これから先、遼真と私は一切関わりのない人間になる。
半月後、私は山村で任務から戻った遼真と再び出会った。
だがそのとき、夕暮れの風にあおられた彼の瞳は、赤く濡れていた。