私の夫は彼の双子の兄になった

私とケビンが結婚して五年目、船員だった彼は、ある航海任務中に命を落とした。

ケビンの双子の兄・カイルが遺灰を持ち帰った時、私は声が出なくなるほど泣き崩れた。

私たちの愛を引き裂けるものなど、何ひとつなかった。たとえ死でさえも。

ケビンを想う気持ちと、彼が逝ってしまった現実に向き合えぬ思いに、私は五度も自ら命を絶とうとした。そのたびに、義母とカイルが私を助けてくれた。

二人は「ケビンの遺志は、君に残りの人生を幸せに生きてほしいということだったんだよ」と、私に前を向くように諭してくれた。

しかし、五度目の自殺未遂で救われたあと、私は完全に崩れ落ちた。愛する人が死んで、もう生きている意味さえわからなかった。

その夜、私はケビンの眠る墓地へ行こうと思った。少しでも彼のそばにいたかった。

だが、家のドアを出たところで、義母の声が聞こえてきた。「ケビン、本当にこのまま偽り続けるつもりなの？」

「お母さん、仕方なかったんだ。エブリンはカイルを失ったばかりで、彼女の一番の願いはカイルの子供を持つことだったんだ。

もし彼女がカイルが死んだことを知ったら、きっと耐えられず、自分を傷つけるだろう」

「でもジュディにはいつかバレるわ。そのとき、あなたはどうするの？」

私は思わず立ち止まった。

偽る？ケビンは死んだんじゃなかったの？

「お母さん、エブリンは今、カイルを亡くしたばかりだ。彼女を放っておけるわけがない。エブリンが無事に子供を産んで、精神的な支えができたら、ジュディにはちゃんと真実を話すつもりだよ。彼女なら理解してくれると信じてる」

エブリンは、ケビンの兄であるカイルの妻だった。

次の瞬間、義母の声に苛立ちと諦めが混ざった。「それでも、カイルのふりをするなんてひどすぎるわ！ジュディはもう十分傷ついてるのよ。もしジュディはあなたが死んでなくて、しかもカイルのふりをして義姉のそばにいたなんて知ったら、どれだけ辛い思いをするか……」

ケビンがカイルになりすましてる？

私の頭が真っ白になった。

そうか……死んだのはカイルで、私の夫の兄だったんだ。

この三ヶ月ずっと、ケビンはカイルのふりをしていた！

私は全身が冷たくなり、氷の底に落ちたような感覚に襲われた。

ケビンとカイルは双子で、子供の頃からそっくりだった。母親でさえ時々見分けがつかないほどだった。

まさか、ケビンはそんな顔を使って、私を欺いていたなんて。

この三ヶ月、私に対するケビンのよそよそしい態度や、彼とエブリンとの距離がだんだん近づいていた様子が頭に蘇ってきた。私の胸が引き裂かれるように痛んだ。

かつて、ケビンは私にとても優しかった。

出会った頃から、彼は私に細やかな気遣いを注いでくれていた。結婚してからも、私たちは幸せな日々を共に過ごした。

けれど今、彼は私にこんな仕打ちをしている。こんな嘘をついて……

私は呆然と部屋に戻り、まるで全身の力を抜かれたかのように、床にへたりこんだ。

ここは私の家だと思っていた。けれど、ケビンがその幻想を壊してしまった。

私はついに、両親に電話をかけた。

「ジュディ、最近どうしてる？体は大丈夫か？」

「俺たちはずっと君のことを心配してるよ。そろそろ一度、帰っておいで」

その声を聞いた瞬間、私は思わず涙ぐんだ。

私は元々孤児で、二年前にようやく実の両親と再会できたばかりだった。

でもケビンと離れたくなくて、そのことはずっと秘密にしてきた。

まさか、ケビンがこんな裏切りをするなんて……思ってもみなかった。

「お父さん、お母さん、私……」私は言葉を探しても、何も言えなかった。

ただ嗚咽交じりにこう伝えた。「……会いたい。家に帰りたい」

それを聞いた両親は、喜びのあまり「すぐに迎えに行くよ」と言ってくれた。

五年前、大学でケビンと出会ったとき、私は恋愛に全く興味がなかった。

だから彼のアプローチに対して、私はイライラしながらも何度も断った。

けれど彼は無理に迫ることはせず、静かに私を見守ってくれた。

彼は毎日私のために心を込めて朝食を用意し、いつも私の分の傘をもう一本多く持ってきてくれた……私が風邪を引いたときも、彼はずっとそばで看病してくれた。

少しずつ、彼は私の心に入り込んできた。そして再び告白された時、私はついに頷いた。

私が幼い頃に迷子になり、孤児として育ったことを知ったとき、彼は私を強く抱きしめ、「俺が君の家族になる」と言ってくれた。

……でも、もうここは私の家ではない。

私は出ていこうと決意した。

荷物をまとめて出かけようとしたその時、ケビンが勢いよく部屋のドアを開けた。

彼は眉をひそめ、問いただしてきた。「ジュディ、今誰と電話してた？航空券って何の話？どこに行くつもりなんだ？」

私は深く息を吸い、心の痛みを必死で押し殺しながら答えた。「何の航空券よ？どこにも行かないわ。ただ、近くを少し散歩するだけ」

彼はじっと私を見つめ、少し疑わしそうに言った。「本当か？」

「ケビンの死は、君にとって本当に大きなショックだったよな。でも、ちゃんと自分を大事にしてほしい。

ケビンが最期に残した願いは、君が無事でいてくれることだったんだ。旅行に行きたいなら、今度俺が連れていくから。もう自殺なんて馬鹿な真似はするなよ」

私は静かにうなずき、何も言わなかった。

その時、エブリンが部屋から出てきた。顔は青白く、腹部を押さえながら苦しそうに言った。「カイル、お腹が痛い……血も出てる……」

ケビンはすぐに顔を青ざめさせ、慌てた様子でエブリンを抱きかかえた。「大丈夫か？すぐ病院に行くぞ！」

彼はエブリンを抱えたまま、急いで外へ走っていった。

私のそばを通るときでさえ、彼は一度も私を見ようとしなかった。

「ジュディも来てくれ。人手が多いほどエブリンの世話も楽になるから」

私は黙って立ち上がり、二人と一緒に救急車へ乗り込んだ。

その道中、ケビンはずっとエブリンを抱きしめ、心配そうに彼女を見つめていた。

自分の夫が、他の女性に優しく接するその姿は、まるで心に突き刺さるナイフのようだった。