『萱草に寄す』の核心は「移ろい」への意識にある。どれほど完璧な造形美を持つ萱草も、やがて枯れてゆく運命と対峙する時、
詩人はそこに人間の生の縮図を見出す。『たそがれのひととき』の連作では、昼と夜の境界線で色を変える花々が、私たちの人生の過渡期を象徴的に表現している。
立原が用いる「薄緑色」や「玻璃色」といった色彩表現は、単なる描写を超えて情感そのものとなって読者の胸に迫る。この詩集が戦前の不安な時代に書かれたことを考えると、萱草の可憐さは、むしろ時代の暗さを映す鏡として機能しているのかもしれない。