単純な実験キットやネットのクイズで左右脳の優位性が測れる、という話はよく目にする。そうした簡易テストに魅力を感じる人の気持ちはわかるけれど、研究者の立場から見るとおおむね勧められないことが多い。
僕は脳の働きが局在化していること自体は否定しない。言語処理や空間認知に偏りがある場合は確かに片側皮質の関与が強いことがある。しかし、その優位性はタスクや環境、発達歴や訓練によって変動する。家庭でできる「利き手で書く」「左右の耳で聞く」「片目で見る」などの簡単なチェックは、あくまでざっくりした傾向を示す程度だ。
本格的な評価は神経心理学的検査や脳イメージング、専門家による解釈が必要で、誤解や過剰な単純化を招きやすい。『The Man Who Mistook His Wife for a Hat』のような症例を読むと、脳の局在性は奥深く、素人判断が及ばない複雑さがあると感じるだろう。だから、興味本位で試すのは構わないが、それを根拠に性格や能力を決めつけるのは避けたほうがいいと思う。