翻訳でよく問題になる単語の一つだと感じている。文脈次第でニュアンスががらりと変わるから、単純に一語で置き換えるのは危険だ。
私がよく使う選択肢はまず 'unfortunately'。ニュースや事実を伝える場面だと自然で無難に響く。たとえば『生憎、明日は行けません。』は "Unfortunately, I can't make it tomorrow." が違和感なく受け入れられる。一方、相手に申し訳なさを示したいときは "I'm afraid I can't make it tomorrow." とすると柔らかく聞こえる。
もう一つ気をつけるのは文体との整合性。フォーマルな文書なら 'regrettably'、感情を強めたい場面では 'sadly' や昔風の 'alas' もあり得る。こうした選択を組み合わせて、原文のトーンを保つのが私の流儀だ。
翻訳の現場でよく頭を悩ませるのは、おやじギャグをどこまで“遊ばせる”かという線引きだ。
経験を重ねてきた僕は、まずネタの種類を見分けることから始める。語呂合わせ系か、同音異義語を利用したものか、あるいは文化依存の一言ボケか。例えば日本語の同音ネタとしてよくある「今日はタイムセールじゃなくて、鯛ムセールだよ!」というギャグがある。ここは直訳しても英語話者には意味が通らないから、機能的に等価な英語のダジャレに差し替える。
適用例として、この「鯛/タイム」ネタは英語では魚の名前で韻を踏む方向に変換して"It's not a time sale—it's a 'tuna' sale!"とするか、もっと自然な会話に落とすなら"Huge fish discounts—what a catch!"のように意訳して反応(苦笑/うめき)を狙う。重要なのは、笑いの種類を残すこと。場合によっては補足でニュアンスを足すか、別の英語ダジャレへ完全に置き換える判断をする。最後に、観客(読者)の想定反応を想像して選ぶのが鍵だ。
言葉の重みを手に取るようにして始めることが、僕にとっての出発点になる。
訳すとき、まず優先するのは詩が伝えようとする“体感”だ。単語ごとの直訳で原詩の骨格をなぞるだけでは、声のトーンや間、行間にある沈黙、そして音の響きが失われてしまう。だから僕は原語のリズムや語感を耳で何度も反芻し、母語で同じ振幅を再現することを試みる。たとえばイギリス・ロマン派の' I Wandered Lonely as a Cloud'のような詩では、孤独と浮遊感を呼び起こす反復と軽やかなイメージが命だ。ここで語彙を吟味し、句読点や改行の位置に一つひとつ意味を持たせることで、原詩の呼吸を守ることができる。
次に、文化的参照や言語固有の比喩に対する配慮が必要だ。直訳で済まない比喩は、別の比喩に置き換えて同じ感情を誘発するよう工夫する。そこにはトレードオフが生じるが、僕は原詩の意図――喚起したい感情や問いかけ――が読者に届くことを優先する。注釈や後書きを使って背景情報を提供するのも一案だが、できるだけ本文だけで成立させる努力を怠らない。
最後に、自分の訳が完璧だとは思わない。複数案を作って時間を置いて読み比べ、他の訳や詩人の解釈を参照する。友人や詩に詳しい人に読んでもらい、感触を問うことも多い。そうして僕は、原意を尊重しつつ、母語で新たな詩的体験を生む翻訳を目指している。
こういうセリフは、場面でかなり訳し分ける必要がある。
私は会話のトーンと話者のキャラを優先して訳すことが多い。『きっしょ』は英語で単純に "gross" や "ew"、さらに強い嫌悪感を出したいなら "disgusting" や "that’s sick" になる。続く「なんでわかるんだよ」は驚きと軽い攻撃性を帯びるから、口語では "How did you even know that?" や短く "How'd you know?" が自然だ。
場面がギャグ寄りなら "Gross—how'd you know?" のように短く切るとリズムが保てる。対してシニカルな嫌悪を強調したい場合は "That's disgusting. How did you find out?" と少し硬めにするとニュアンスが伝わる。作品によっては "Creepy. How'd you know that?" のように "creepy" を使って不快感と恐怖混じりの意味を出すことも考える。
ちなみに自分が字幕を作るときは文の長さと表示時間を念頭に置く。『銀魂』みたいにテンポ重視の作品なら短めの "Ew—how'd you know?" を選ぶことが多い。最終的には場面の空気を壊さないことが一番大事だと思う。