漢字の響きが好きで、辞書をめくるたびにその語感に引き込まれてしまう。僕が持っている国語辞典や大辞泉、広辞苑あたりを参照すると、共通して示される定義はだいたい次のようなものになる。まず第一に「危険である」「物騒である」といった意味合い。状況や雰囲気が不安で、油断するとまずいことになりそうだ、というニュアンスが中心だ。
第二に「用心を要する」「気を付けねばならない」という用法が挙げられる。辞書では単に『危ない』と訳すだけでなく、『予断を許さない』とか『穏やかでない感じ』といった補足が付くことが多い。語源的には字面の通りに『剣』と『呑』の組み合わせが生み出す鋭いイメージが効いていて、文字どおりに命にかかわるような危険を想起させるのだろうと説明されることがある。
用例を見れば扱われ方の差がわかりやすい。辞書に載る例文は「情勢は
剣呑だ」「その場の空気が剣呑だった」といった具合で、どちらも不穏さや警戒を促す文脈だ。現代の会話ではやや文語的・堅めの語として扱われ、ニュース記事や小説など書き言葉で目にすることが多いという注釈もよく見かける。だから日常会話で連発する語ではないが、場面の緊張感を端的に伝えるには便利な語だ。
結局、辞書が伝えたい核は「安全ではない、気を引き締めるべきだ」ということに尽きる。僕としては、古風でありながらも今でも通用する凛とした語感が好きで、文章で緊迫感を出したい時にこっそり使うことがある。