金沢ひがし茶屋街の歴史的な建物を巡るコースは？

茶屋街の西端にある『金沢市伝統産業館』は、明治時代の料亭を改装した施設で、加賀友禅や金箔貼りなどの実演が見られる。建物の随所に施された『虫籠窓』や『駒寄せ』といった意匠は、当時の建築技術の高さを物語っている。

『東山文化交流館』では、大正ロマン漂う洋風建築と和風建築が融合した独特の空間が広がる。ここは元料亭『東山閣』だった場所で、階段の手すりに使われた螺鈿細工や、天井の唐紙模様が往時の華やかさを伝えている。

小路を入ったところにある『菅原屋』は、明治の茶屋建築をほぼ原形のまま残す貴重な建物。一階の『ざしき』と呼ばれる客間からは、当時の客が楽しんだ庭園景色をそのまま再現できる。雨戸の滑り具合や床の間の柱の曲線など、細部まで歴史が息づいている。

ひがし茶屋街の歴史建築巡りで外せないのが『旧鶴来屋』。明治初期に建てられたこの茶屋は、金沢らしい『紅殻格子』と呼ばれる赤みがかった格子戸が特徴で、夕暮れ時に陽が差すとまるで浮世絵のような光景が広がる。内部には『お囃子座』と呼ばれる芸妓が舞を披露するための特別な舞台があり、建築当時の音響設計の妙が感じられる。

近くにある『中村邸』も見逃せないスポット。元料亭だったこの建物は、金沢の職人技が詰まった『金沢欄間』や『加賀襖』が見事で、部屋ごとに異なる趣向を凝らした襖絵が楽しめる。特に冬場は雪見障子越しに積もる雪を眺めながら、かつての旦那衆が楽しんだであろう優雅な時間を追体験できる。

路地裏にひっそり佇む『梅ノ橋』周辺の町家群も必見。ここでは一般住宅として現役で使われている建物も多く、生活の息遣いを感じながら伝統建築を見学できる稀有なエリアだ。

金沢ひがし茶屋街を散策するなら、まずは『志摩』から始めるのがおすすめだ。国の重要文化財に指定されているこの建物は、格子戸や二階の張り出し窓が当時の面影を色濃く残している。内部は一般公開されており、漆塗りの柱や金箔をあしらった欄間など、細部まで豪華な装飾が施されているのが特徴。

次に足を運びたいのが『懐華楼』だ。ここでは伝統的な芸妓の舞を鑑賞できるだけでなく、茶屋建築独特の『すだれ』や『遣り戸』といった仕掛けを間近で見学できる。特に二階の座敷から見下ろす中庭は、季節ごとに表情を変える風情ある空間。

最後は『東山ひがし』エリアにある『金沢茶屋記念館』へ。明治から大正にかけて実際に使われていた茶道具や衣装が展示されており、当時の遊興文化に触れられる貴重なスポットだ。建物自体も防火壁『うだつ』が印象的な町屋様式で、写真映えすること間違いなし。