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ゲーム開発の現場でよく使われるのはレイヤリング技術だ。単一の音源ではなく、複数の要素を重ねることでリアルな銃声を構築する。例えばベースとなる空砲の音に、金属パイプを叩いた高音、砂袋を打つ低音をミックス。これにリバーブで環境音響を再現すれば、屋内か屋外かといった状況も表現可能だ。
『コール オブ デューティ』の効果音チームは、実際の銃器録音に加え、スリングショットでボルトを発射する音をサブサウンドとして採用している。各銃器ごとに特徴的なエコーを調整し、AK-47なら鈍い反響、M16なら鋭い残響と使い分けるのがポイント。音響心理学の研究によれば、人間は高周波成分で銃器の種類を無意識に判別しているというから興味深い。
銃弾の効果音を作るのは意外とクリエイティブな作業だ。実際の銃声を録音する場合、安全面から空砲を使うことが多いが、それだけでは迫力に欠ける。そこで面白いのが、他の音源を組み合わせる手法。例えば、バットでスイカを叩いた音に金属音を重ねると、弾丸が肉体を貫くグロテスクな響きが生まれる。
『メタルギアソリッド』シリーズの効果音チームは、自動車のバックファイア音を加工してアサルトライフルの連射音を作ったという裏話が有名だ。低音部を強調するEQ調整や、わずかなディレイを加えることで、空間的な広がりも表現できる。最近ではフォーリーアーティストが鶏肉を叩く音を銃撃戦シーンに転用するなど、食材を使った意外なアプローチも話題になっている。
銃声のディティールを追求するなら、弾丸が着弾する素材ごとの違いを表現したい。コンクリートに命中させる場合、大理石の小片を砕く音と鉄板を揺らす音を合成すると良い。ウッドチップを蹴散らした音は木製の扉への着弾音に転用できる。
『バトルフィールド』シリーズでは、弾丸が水没する時の独特の鈍い音まで再現されている。これは水面に石を投げ込む音に、ウォーターベッドを叩く低音を組み合わせたものだ。サウンドデザインの妙は、プレイヤーが目を閉じていても戦場の状況が把握できるところにある。
映画のサウンドデザインで重要なのは、物理的正確さより感情的なインパクトだ。『マトリックス』の銃声は、実際の銃よりも低音を増幅させて作られている。観客に「危険」を本能的に感じさせるため、爬虫類脳に響く周波数を意識した設計になっている。
面白い事例が『ジョン・ウィック』シリーズだ。主人公のピストル音には意図的に金属質の余韻を加え、殺傷能力を音で可視化している。逆に敵の銃声は平板に処理することで、主人公の武器が特別な存在だと暗示する工夫がされている。サウンドデザイナーによれば、銃声のエコー時間を0.3秒延ばすだけで、観客の緊張感が23%上昇するというデータもあるそうだ。
アナログな手法で銃声を再現するなら、スリンキー(バネのおもちゃ)が意外に使える。伸びた状態で叩くと、弾丸が空中を
飛翔する「ビュン」という音が再現可能だ。これにグレネード効果音を加えたい時は、スチール製のゴミ箱を蹴る音が重宝する。
インディーゲーム開発者たちの間では、デジタル処理だけでなく、こうした手作り感のある音源を採用する傾向が強まっている。『Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades』のようなVRシューティングでは、銃器の操作音まで細かく再現することで没入感を高めている。