インタビューで聞くたびに驚かされるのは、
魚 祐の話し方がとても具体的で、同時に余白を残しているところだ。私が印象に残っているのは、制作の細部を笑い交じりに語りながらも、決して全部を明かさないバランス感覚。クリエイターとしてのプライドや、現場で一緒に働くスタッフへの配慮が随所に感じられて、聞く側として胸が温かくなる場面が多かった。
彼は制作秘話を語る際、まず「どこで苦労したか」を正直に話すことが多い。スケジュールの逼迫、予算や素材の制約、それに伴うアイデアの削ぎ落としなど、表に出ない苦労を飾らずに伝える。その一方で、思いがけない偶然や現場のちょっとした助けが転機になったこともよく強調していて、失敗談と成功の裏にある日常の細かな積み重ねを同じ重さで語るのが特徴的だ。チームメンバーの名前やエピソードを出して感謝を示す場面も多く、その口ぶりからは自身が孤立した天才ではなく、共同作業の産物であるという意識がはっきり伝わってくる。
さらに興味深いのは、魚 祐が制作過程の「選択肢」をどう語るかだ。あるシーンをどう見せるか、あるキャラクターの表情をどう微調整するかといった細かな決断について、何度も試作を重ねた過程や切り捨てた案の断片を惜しげもなく出してくれる。そうした話の中には、最終的には作品のテーマ性や感情に合致するための妥協と工夫が隠れていて、それを聞くと作品を改めて読み返したくなる。また、音楽や声優の起用、編集段階でのテンポ調整など映像や文章以外の要素にも目を向けていることがわかり、制作が多面的な対話の連続であることをあらためて実感させられる。
最後に、ファンとの関係についての語り方も心に残る。ファンの反応をただ受け止めるのではなく、自分たちの創作をどう還元していけるかを常に考えている様子が
窺える。もちろんすべてを受け入れるわけではなく、作り手としての線引きや次に目指す方向性を示すことも忘れない。それがあるからこそ、制作秘話は単なる裏話にとどまらず、作品とその受け手をつなぐ一つの物語になっている。聞くたびに新しい発見があり、こちらも創作や鑑賞の仕方に刺激を受けるのが魅力だ。