互いの身代わり
「真実か挑戦か」のゲームで、私は「真実」を選んだ。
私は一枚の紙を引いた。そこには、【あなたたち、いつ結婚するつもりなの?】と書かれていた。
友人たちは一瞬で静まり返った。
私は隣にいる江崎一輝(えざき いっき)の方へと身を向け、彼の表情から答えを読み取ろうとした。
そのとき、一輝がテーブルに置いていたスマホが光り、画面には南川雫(みなみかわ しずく)からのメッセージが表示された。
【一輝、ドナーが提供をやめたって、医者が言ったの。すごく怖いよ】
一輝は立ち上がり、後ろの椅子に掛けていた上着を取ると、皆に軽く謝って、足早に店を出て行った。
私の気まずさなんて、彼はまったく気にも留めなかった。
私は表情を整え、笑いながら言った。「何を見てるのよ、今月末にご祝儀をもらうから、ちゃんと来てお祝いしてね」
場の空気は一気に明るくなった。
「ほらな、一輝はわざとクールぶってるだけだって思ってたんだよ」
周囲の祝福の声が私を包み込む。けれど、私は少しも嬉しくなかった。
だってそれは結婚式なんかじゃなく、私が自分のために用意した「葬式」なのだから。