潮風が想いを連れ去る
三年間、黒崎隼人(くろさき はやと)に必死で媚び続けた末、彼はようやく私との結婚を承諾してくれた。
結婚後、さらに七年間媚び続けた。そして、彼はついにサプライズを用意してくれると言った。
その約束をもらい、私はその日のうちにSNSに三回も投稿してお祝いし、約束の海辺で五時間も待った。
五時間後、隼人は現れなかった。
代わりに、彼の幼馴染の高槻玲奈(たかつき れいな)がホテルからの位置情報を添えたSNSを投稿した。
【あなたとの距離なんていらない。肌が重なるマイナスの距離でいたい】
添えられた写真は、キスマークと歯形だらけの隼人の胸元だった。
急に吐き気がして、私はその投稿に「いいね」とコメントを残した。
【帰ったらちゃんと体を洗ってね。汚いのは嫌だから】
次の瞬間、彼からすぐに電話がかかってきた……