少女のまま、風に攫われて
4歳のとき、私と弟の鈴木竜之介(すずき りゅうのすけ)は溺れて、私だけが助かった。それから母は、私のことを憎むようになった。
夜になると、母は何度も「あめ」を持って、私に無理やり食べさせようとした。でも、そのたびに父が止めてくれた。
その後、私は長い髪をばっさり切って、可愛いワンピースも着なくなった。竜之介のかわりになろうと必死だった。そうしたらやっと、母は私に目を向けてくれるようになった。
それから3年後、母のお腹にまた赤ちゃんができた。「死んだ竜之介が帰ってくる!」って彼女は大喜びだった。
母が喜んでいるのを見て、私も嬉しかった。竜之介が帰ってくるんだ。本当によかった……
じゃあ、このお家にもう、私っていう代わりの子は必要ないんだ。
私は、昔、母が飲ませようとしたあの「あめ」を見つけだして、静かに飲み込んだ。