婚約者がマフィアのボスになった後、子どもを連れて別れた
リアンド・ボーモントと婚約して七年目、彼は亡き兄のすべてを継承した。
兄の妻――デイナ・フォウラーも含めて。
リアンドがデイナと夜を共にするたび、私を抱きしめてこう言った。
「ジェニー、もう少しだけ待ってて。デイナが妊娠したら、すぐに結婚式を挙げよう」
それが、西海岸最大のマフィア一族・ボーモント家が、リアンドを次期「ボス」に据えるための、唯一の条件だった。
帰国して半年、彼はデイナの部屋に五十九回足を運んだ。
最初は月に一度だったのが、今ではほぼ毎日――
そして六十回目。私の婚約者がデイナの部屋から戻ってきたその日、ついに朗報が届いた。デイナが妊娠したというのだ。
同時に届いたのは、リアンドとデイナの結婚発表。
「ママ、うちで誰か結婚するの?」
華やかに飾りつけられた部屋を見回しながら、幼い息子が無邪気に聞いてきた。
私は何の感情も浮かばないまま、彼を抱き上げて答えた。
「そうよ。あなたのパパが、好きな人と結婚するの。だから私たちは、もうここを出ていくの」
リアンドはまだ知らない。私の実家、ベリン家が、今やボーモント家に匹敵する新たなマフィア一族となったことを。
そして私は――ベリン家で最も愛されて育った末娘、ジェニー・ベリン。誰にも、ましてや結婚なんかに、縛られるつもりはない。