初恋を救うため、最後の腎臓を奪った裁判官の夫
あの人は、裁判官という立場を利用して、私の腎臓を「彼女」に与える判決を勝手に下した。
——尿毒症に苦しむ、かつての恋人・東雲紗良(しののめさら)。
「お願い……私はもう腎不全で、一つでも摘出されたら命はないの……!」
そう訴えた私に、夫は目を歪め、怒鳴り返した。
「紗良がここまで重症なのに、まだ嫉妬してるのか!?お前には心ってもんがないのか!」
そして、私の意思とは裏腹に、手術は強行された。
病院の薄暗い手術室で、私の腎臓は無造作に「移植用」として取り出された。
その数日後——腎不全は急速に悪化し、私は誰にも気づかれぬまま、人気のない病院の片隅で、ひっそりと息を引き取った。