Chapter: あとがきはーい、深田ありの名前は深田ありと言いますこんにちはー。 深田ありは小説はあとがきから読み始めるタイプの人間でして、とにかくあとがきが好きでした。 となれば、自作もあとがきを書きたくなるのが人情というもの。 前の作品であるイヤホン『アコ』の恋とサトラレメイドはあとがきを書かなかったんですが、そのことにずっとモヤモヤしてて、「ええい、もう我慢できない!」と今作からあとがきを書くことにしました。 今からでもあとがき書きたいぞ……。特にサトラレメイドは参考資料とか一覧したかったし。図書館で数多の本を片手にノート取りながら時代考証のお勉強したんだもん。 まあ、今更だからやりませんけど。 さて、本作についてですが、深田ありはナショナルジオグラフィックという番組が好きでして、そこで何年も前に観た『月がもし無くなったら地球は地軸が乱れて全球凍結する』というのと、『地球が自転を停止したら昼が半年、夜も半年になる』というのがずっと記憶に残ってまして、それが本作を書こうと思ったきっかけになっています。 「時間は螺旋状に流れる」というのは、ロシアの神秘思想家であるP・D・ウスペンスキーの「時間は螺旋状に動き、次元の一つである」という説を採用。黒い渦はここから着想を得ています。 作中に出てきたアトラス彗星というのは「Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System」の略で、日本語では小惑星地球衝突最終警報システムです。地球近傍天体を広域掃天し、衝突のおそれを早期に警戒するための観測網で、これは実在するものですね。 本作は面木にせよ墓川にせよ由那にせよいずみにせよ、暴力によって全てを解決させようとしますが、これは「法がなければ、人間は利害を暴力で解決する」とフロイトが提唱したものが根っこになっています。 終末には法はないから、秩序とは暴力によって成し遂げられる。 しかしルソーが、ホッブスの言うところの自然状態の人間には、自己保存の本能である「自己愛」と、他人の苦痛を見て無意識に助けようとする「憐憫の情」が備わっていると説いたところからも、本作は単なる暴力で終わるようにはデザインしませんでした。
Last Updated: 2026-10-30
Chapter: 終章 4 黒い渦は、今度こそ消えた。子供たちは手を繋ぎ、肩を寄せ合ってゲートを通過したのだ。 俺たちはそれを見送った。 三人でもゲートはギリギリだった。小学校低学年くらいの彼らでもギリギリなのだ。おそらく宮一安全衛生委員会の六人が通ることは不可能だっただろう。となれば、やっぱり殺し合いは避けられなかった。 「子供たち、今度こそ行ったね」 黒い渦が消えた屋上は本当にコンクリートの荒野みたいで、いずみの声だけがぬくもりとなって響く。 「うん」 「最後まで、春弥は、いてくれるよね?」 「いるよ。最後の最後まで、ずっと」 どうせ他に行く場所もない。気温はもうマイナス三十度近いだろう。どこに行っても死ぬ。 胸だけじゃない。全身に激痛が走る。頭がおかしくなる寒さだ。 でも、いずみは俺の肩にぴったりと体を寄せながら、不安そうに。 「わがまま、なのかな?」 「いいよ、これくらいのわがままは。むしろ嬉しい」 「春弥は帰り……たかったよね、ごめん」 「いいんだ。いいんだ」 確かに本音を言えば帰りたかったさ。元々ここは俺の世界ではないのだから。 母さんに会いたかった。夏をもう一度見たかった。 でも、それはもう叶わない。 そのことに思うことがないわけじゃないけれど、子供たちを犠牲にしてまで帰ろうとすることは俺には無理だったし、いずみも許しはしないだろう。もしそんなそぶりを一度も見せていれば、俺は今ここにいない。他のみんなと同じように、撃ち殺されていた。 ならばせめて誇りと倫理を持って、愛する人と最期を迎えよう。 「春弥……」 「ほら、夜だ」 「あ……」 腕時計を見ると午前零時。ここでようやく夜が来た。 おそらく日の出は三十分後か一時間後か、下手したら数分かもしれない。 本当に短い夜が、俺たちを迎えてくれた。 「少しの間だけ、ほんの少し。でも、夜だよ」 俺はいずみの肩に手をかける。いずみは抵抗しなかった。 「うん、夜が来るね。あは、春弥」 「なに?」
Last Updated: 2026-10-29
Chapter: 終章 3「っ!? み、みんな!? 黒い渦をくぐらなかったの!? ど、どうして!?」 黒い渦があるのか!? まだあるというのか。俺は振り返り――あった。まだ、あった。気づかなかった。俺も、そしていずみも。 俺は撃たれたショックでしばらく気絶していたから仕方ないとしても、いずみも気づいていなかったとは。それほど仲間を撃ち殺したショックが大きかったということだろうか。 そりゃそうだ。いずみみたいないい子が人を殺して平静でいられるわけがないのだから。 三人の子供たちがいずみのもとへ駆け寄ってくる。 「おねーちゃん」 しかし、いずみはそれを拒絶した。 「ダメ! 私はついていけない。厳しいことを言うけれど、みんなはこれから力を合わせて生きていくしかないの! 辛いこと、悲しいこと、大変なこと、いっぱいいっぱいあると思う、でも、私に頼ることはもう出来ないの! わかって!」 しかし子供たちは首を振り、 「わかってるよ」「しってるよ」「おねーちゃんもきてなんてわがままいわない」 とても大人なことを、言わせてしまった。 いずみが震えながら訪ねる。 「え……じ、じゃあ、どうして……」 すると三人は、一枚の紙をいずみに差し出す。 「だから、これを、おねーちゃんに」「うけとって」「ね」 そこには、六人の子供と、その中央にいずみがいるクレヨン絵が、描かれていた。 子供らしい稚拙さはあるが、丁寧に作られ、そして皆が――笑っている。 「え……ぁ……」 「「「わすれないで」」」 三人の声が重なって、そして。 「……ぁ、ぅ……。う、うぅ……」 いずみがアゴに梅干しを作りながら必死に泣くのを堪えようとしたから、俺はそんな彼女を抱きしめて、優しく背中をさする。 「いずみ、泣いていいんだよ。もう、我慢しなくていいんだよ。ずっと我慢してたんだろ? 子供たちを守るために、ずっとさ」 一拍置いて。 「俺はさ、一つ気になってたんだ。由那にしろ面木にしろ墓川にしろ花香にしろ、みんな本性を一度はさらけ
Last Updated: 2026-10-28
Chapter: 終章 2 それから俺といずみはしばし無言で世界を眺める。 白い廃墟。荒廃した地獄。命の灯火を消し去るような寒さ。おそらく俺たちはあと数日も生きてはいられまい。でも、死ぬにしても、この景色はグロテクスな美をたたえていて、不思議なほど美しかった。 太陽は決して沈まない。 すると、いずみが世界を眺めながら、ぽつりと。 「ねえ春弥。黒い渦について一つ黙ってたことあるの」 「え?」 「最初見つけた時はね、紫色だったんだよ、あれ」 「え……」 そう言えば由那が言っていた。ゲートである黒い渦は通過すると色が変わると。黒いのは確か、最初と最後だけだと。 なのに何故、色が黒いのか。 その理由は、意外なものだった。 「私はさ、密かに子供たちを送ってた。いや、最初は瓦礫投げ入れてみたんだけど、その都度色が変わって、何か嫌な気配がしたから、勇気を出して子供たちを送り込んだ」 「…………」 「気づかなかった? 孤児は六人って私言ったよね? 六人いた?」 「あ……っ!」 そうだ! いずみは何度か言っていた。孤児は六人だって! しかし初めて会った時は既に四人しかいなかった。そして後に三人になった。六人見かけたことは一度もない! それはつまり、いずみが送り込んでいたということ。 でも、だったら何故三人を残した? 「でもある日黒い渦がなくなっちゃった。由那が、隠したんだね」 「…………」 なるほど、だから三人だけだったのか。 そしていずみがギリギリまで隠していたのは、黒い渦の場所がわからなかったからか。 「実は私、シェルターの人たちについてはどうでもいいんだ。だって子供たちが減ったことで騒ぎになるかと思ったらならないんだもん。誰も気にも留めない。そんな薄情な人たちを助けようなんて、私思わない」 「…………」 「だから子供たちしか最初から助けるつもりはなかった」 なるほど、黙っているわけだ。彼女は多くの罪を隠していた。 ずっとずっと、隠していた。 俺は過去何度か疑
Last Updated: 2026-10-27
Chapter: 終章 ラストフィナーレをあなたと 1 雪が止み、白い世界が広がっている。 無限の寒さに包まれながら、荒廃していく廃墟がまるで墓標のように連なっている。 いずみは斜めに傾いたビルの屋上の先に座り込み、滅び行く世界を眺めながら悲しく笑う。 「はは……私、なにやってんだろ……」 彼女に後悔はあるだろうか。多分ある。どうしようもない後悔が。 「でも仕方ないんだよ、ね……悪者になるのも仕方ない、か。あはは」 笑い声が、静かに世界へ拡散する。 世界はそれに答えることなく、ただただ滅び行くだけであった。 「でも、これでよかったんだよ。これで……」 自分に言い聞かせている。必死に言い聞かせている。 「みんなは助けた。みんなは助けた。だからもう、大丈夫」 彼女には一つだけ正義があった。これをしなければならない理由があった。 「あはは、せめて夜になってくれればなあ。もう、夜にもならないや」 そんな彼女の姿を見て、『俺は』ゆっくりと声をかける。 「やっぱり、子供たちのためだったんだ」 ぎょっとして振り返るいずみ。その顔はしかし、驚愕の中にほのかな嬉しさが垣間見える。 「春弥……生きてたんだ」 「たまたま、ね」 弾丸は心臓には当たらなかった。肋骨にヒビを入れて体を貫通していった。 勿論痛みはあるし、これを放っておけば死ぬだろう。 でも、どうでもよかった。胸がズキズキと痛むが、それだけだ。折れてもいない。 俺はよろよろといずみの傍まで歩み寄ろうとして、彼女が手を伸ばして制止させる。 「だめ、来ないで。私の手は血にまみれている。私は人殺しなんだよ」 「でも、子供たちを通すためには、仕方なかったんだろう?」 「…………」 どうしていずみがみんなを殺したのか。 それは子供たちを黒い渦にくぐらせるためだった。 黒い渦のサイズは高さ二メートル、幅一・五メートルしかない窮屈なもので、しかも一度しか入れない。数珠つなぎも出来ない。 どう
Last Updated: 2026-10-26
Chapter: 4章 10 屋上に辿り着くと、白い空が世界の全てを覆っていた。猛烈なまでの雪が吹き荒れていて、世界がほとんどわからない。 屋上は完全にコンクリートの荒野と化しており、あちこちに入った亀裂が得体の知れない悲惨さを醸しだしていた。 そしてそんな黒い世界の果てに見える――ブラックホールを縦にしたようなデザインの渦。 高さは二メートルほど、幅は一・五メートルほどの小さな渦だ。 「これが……黒い渦」 墓川が目を丸くさせた。どうやら今の今まで半信半疑だったようだ。さもありなん。 俺はこくりと頷き、 「ああ、ゲート。これが……この世界から脱出する、唯一の希望」 そう答えた。体が震える。心臓が高鳴る。 あそこさえくぐれば、俺たちは助かるのだ。この極寒地獄からもおさらばだ。 面木が俺の肩を叩きながら、興奮気味に訪ねてくる。 「マジで黒い渦だな。この向こうにてめえの世界があるんだな、田下?」 「いや、由那の話ではどこの世界に繋がるかわからないみたいだ」 「アアァッ!? ナンダソリャ!?」 驚かれたか。いや、これは俺も知らなかったことだ。実を言うなら、俺だって思うことはある。お母さんに会えない。家に帰れない。あの黒い渦は俺の故郷へは繋がっていない。 そのことに悲しさはある。絶望もある。 でも、今は生きることが最優先だ。少なくとも黒い渦はあったし、あの向こうには生きる道が繋がっているのも、多分間違いない。由那のいうここ以上の地獄に繋がっていない限り。 なら、覚悟を決めろ。 俺はそれだけの気持ちを込めて、面木を見つめた。面木はチッと舌打ちして後ろに下がる。 と、違和感。 「ただ、なんか、それとは別に……あれ」 目の前には黒い渦がある。俺がこの世界に来た時と同じものだ。 同じ――同じ? 「渦が、黒い」 俺は目の前の渦について言葉に乗せてみて、気づく。 「黒……そうだ! 黒い! なんでだ!? 由那、確か君は言ったな? ゲートは一度くぐると色が変わるって! 最初は黒! そして次は――」 「紫」 由那がつまらなそうに答えた。 「なのになんで、なんであれは黒いんだ!? 由那、黒って確か……」 「最初と最後にしか現れない。つま
Last Updated: 2026-10-25
Chapter: 終章 2 さつきさんは笑顔だった。にやにやとして、小悪魔的で、とても楽しそう。 一体この顔はどういうことだろうか? 俺の疑問はしかし、さつきさんのこの一言で判明することとなる。 「だって、知ってて黙ってましたから」 声は弾んでいた。嬉しそうだった。 俺は肩を落とし、何故かつられて微笑んでしまう。 「さつきさん……ああ、君はそういう子だったね、そういえば」 「はい! 私、もうすっかりドキドキする楽しさに目覚めてまして、誠二様と一緒にサトラレ征伐するのが楽しくて、楽しくて、楽しくて」 彼女は一呼吸置いて、 「そして何より、誠二様のこと、好きですから」 そう言いながら、ぎゅっと、俺の手を握ってきた。 「さつきさん……」 「私、悪い子なんです」 ウインクするさつきさん。 ああ、確かに彼女は悪い子だ。いい子なんだけど、悪い子だ。矛盾しているようで実は何も矛盾していない。 そして、俺は、そんな彼女が―― 「嫌いになりました?」 とても愛しい。 「嫌い? まさか。俺がそんなことで手のひらを返すような矮小な細菌野郎だと思ったかい? 見くびられたモノだね」 俺はふぁさっと前髪を梳きながら背筋を伸ばし、キラリと歯を光らせて見せた。俺の歯は毎日徹底的に洗っているのでピカピカだ。宝石のようにきらめいている! さつきさんは俺を掴む手に力を込めながらわくわくと目を輝かせている。 なら、その思いに応えよう。 「そう、俺は怖じ気づかない! 俺は諦めない! 一度サトラレを征伐したんだ、何度だって倒してやるさ!」 「そうです! それでこそ誠二様です!」 さつきさんはわかってくれている。それがとても嬉しい。愛しい。 ああ、空は青空じゃないか! なんて清々しいんだ! うん、俺はそういうやつだ。 俺はさつきさんの手を握り返し、それを天に掲げながら雄叫びを上げる。 「ようし、さつきさん! ついこてこい! 早速サトラレ征伐
Last Updated: 2026-08-13
Chapter: 終章 実は悪い子なんです 1 冬休みが間近に迫った十二月中旬。少しだけ薄い雲のかかった青空。今日は風も吹いておらず、透徹しつつも穏やかな空気が支配する中、俺はのんびりした足取りで家を出た。 さつきさんはいつものようにメイド服を身にまとい、俺の見送りをしてくれている。 サトラレを征伐して早三日。さつきさんは市川家近くの借家で家族三人暮らしている。 でも、離れ離れじゃない。 「じゃあこれからは通いで奉公してくれるんだ」 俺が鞄をブランコのように振りながら声を弾ませると、さつきさんは優しく微笑みながら指を七本立てる。 「はい。やはり借金問題は……まあ入地さんの口添えで解決しましたけど、生活が苦しいのは変わりませんし、元は私のせいですから、助けるために夜の七時まで」 「家族団らんは?」 「ですから七時までです。夜は家に帰って、ですね。両親も私と一緒がいいみたいですし。いずれミルクホールを再建させられるように」 「なんていい子なんだ! それでこそ俺が愛しただけはある……」 別に家族団らんするだけでいい子かどうかなんてわかりゃしないのだが、こういうのは理屈ではないのである。俺のハートに眠る熱いパトスがうずく! それで十分だ。 「えへへ」 ほら、このようにさつきさんの笑顔を見ると、俺は言ってよかったと思えるのだ。 と、その時。 (いい調子だな……このまま続けば……) 念波が、声とは違うさつきさんの声が、俺の脳に直接響き渡った。 「っ!? あ、あれ、今、サトラレが発動しなかった!?」 「な、なんのことでしょう」 さつきさんは目を反らすが、 (ゲ……も、もうバレた……。やっぱり心の声は隠せないよう) またしても音とは違う言語が、脳の隅々を電気のように駆けめぐった。 わからない。理解出来ない。天を仰ぐとそこには青空があった。なんて無神経な空だ! 「ちょっと待ってくれ! サトラレはちゃんと征伐したじゃないかっ!」 ダメだ、冷静になれない。なんでサトラレが発生しているんだ。あり得ない。
Last Updated: 2026-08-12
Chapter: 4章 15「はぁ……ん……あ……はぁ……はぁ……」 さつきさんの荒い吐息。ぐったりと倒れそうになるのを俺は抱きかかえて防ぐ。 念波はもう聞こえてこない。彼女の心の声も響かない。 「やった、倒した……のか?」 確証はないが、おそらくはそうだろう。 と、メイド服をまとった聖子が俺のもとまで駆け寄り、ぽんと、背中を叩いてくる。 「強敵だったね、兄者……」 「さつきさん、サトラレは……ある?」 さつきさんは俺から離れると深呼吸を一つして、自分の体をまさぐり出す。 「え、えーと……あ……出ない。浸食を感じない……。あ、いえ、聞こえますか? 私が何て思ってるか、わかりますか?」 声? 何か言っているのか? 俺は耳を澄ませてみる。だが、何も聞こえない。 念のため聖子の方を向く。彼女は強く首を振った。それは、つまり―― 「聞こえない。聞こえないよさつきさん!」 「誠二様!」 手をぎゅっと握りあい、喜びを分かち合う。 周囲にいる名士たちが何事とばかりに目をぱちくりさせている。 「今だ、告白するには今だ、今しかない!」 既成事実を作る絶好のチャンス。これを逃してはならぬ。 「言うぞ……言うぞ……今は各界の名士も集まっている……今なら祝福……」 あれ? 何故だろうか。動機が激しくなってきた。 息が荒い。汗がにじむ。体がかっかして、耳など火傷しそうだ。 どうして? なんで? ホワイ? 「…………」 さつきさんが冷たい目でじっと俺を見つめている。不安と失望が双眸にありありと浮かんでいるのがわかる。 「言うぞ……言うんだ……勇気を出せ、市川誠二!」 俺は必死に自分に言い聞かせ、大きく息を吸って。 「あ、あの……その……さ、さつきさん……う、うぽお」 うぽおってなんだようぽおって! 「兄者……」 「誠二さん……」 気づくと、聖子と鈴子さんも非常に冷ややかな、南極みたい
Last Updated: 2026-08-11
Chapter: 4章 14「ではみなさん、しめっぽい話はこれまで、飲みましょう! グラスをお受け取りくださいな。さ、誠二さんもいらして」 「あ、ああ……えーと」 行って何をしろと? 謝罪? 不味い酒になりそうだ。 と、道中聖子がくるりと身をひるがえし、自身の姿を見せつけてきた。 「兄者、どう?」 「お前、その格好……」 メイド服着てどうするんだよ。しかもわざわざ掃除が終わってから着替え直したのかよ。こいつもまたバカなんじゃなかろうか。 「せっかくだから七岸さんと同じにしてみた! ほら、制服は沢山余ってるし!」 「にぃー」 「うりっちも喜んでる」 「はは……ま、いいや、じゃあさつきさんと聖子は給仕を頼むよ。あとお父さんとお母さんもよろしくお願いします」 「「はい、わかりました」」 二人はきちんとした格好だがスーツと着物で、当然メイド服など着ていない。当たり前である。だいたいさつきさんだって着物姿だ。聖子がおかしいんだ。 さて、俺は各界の名士たちに頭を下げる仕事を始めよう。正直気が重い。彼らはみんな爵位持った華族様なんだぜ? 怖いよ。俺平民の息子だし。 ――と、その時。 「く……あ……っ! いけない……な、なにこれ……っ!」 「さつきさん!?」 しまった! 今までなまじ順調だった分心の隙が! 「我が最後の力、思い知れ。何が何でも、余は生き残らねばならぬ!」 声までしやがる。黒い影が出てくる。名士たちが何事だとざわざわ声を立て始めた。 「く……この状況で、最後の抵抗か、サトラレが……上等じゃん」 でも、だからどうした? そういう状況だからこそ、俺は燃えるんじゃないか。今までも荘だったように、これからもそうなんだ。 俺は市川誠二! ミスター完璧超人をめざす|魂《おとこ》! いかなる困難もこの鍛えられた知能と体力と精神力で撃砕するのみ! いくぞ、サトラレ! 「誠二……様……」 さつきさんがうずくまりだす。霊体はどんどん濃く、大きくなっていく。 さらに念波
Last Updated: 2026-08-10
Chapter: 4章 13 全ての準備を終え、俺は顔を洗って改めて学ランをまとう。さっきのは掃除で汚れてしまったからな。さつきさんも聖子が縫った着物に着替え治した。 汚れたメイド服で給仕はさせられない。 ちなみに着物は相当上物だったようで、ひどく似合っていた以上にさつきさんは恐縮しっぱなしで、まあ、逆にそれが緊張を呼び、余計なことを考えさせられなくなる結果になったので怪我の功名と言えよう。 余計なことは考えてしまいそうだが、そこはお父様とお母様、そして聖子の頑張りに期待する。遠慮無く耳元に息を吹きかけてやって欲しい。 さて俺はというと、やはりというか、改めてまたしても十二単をまとった鈴子さんと共に壇上に立ち、名士たちを見下ろしている。 「さあ、最後。記者会見からのパーティーだな。鈴子さん、大丈夫なんだろうな?」 「勿論よ。私に任せて。楽団も用意したわ」 「いや、楽団はいらん」 しかし鈴子さんは音楽を奏でさせた。モーツァルトのピアノソナタ十一。 やっぱり彼女は変人だ。というか、俺の周囲には変人ばかりなのは何故だろう。俺もまた変人だからだろうか? 馬鹿な。 そんなことを考えていると鈴子さんは名士たちに向け、ゆっくりと、けれどしっかりした口調で言葉を紡いでいく。 「さて、お集まりの皆様。入地鈴子でございます。この度、わたくしの婚約破棄発表記念会見にお集まりいただきありがとうございます」 途端、ざわざわと名士たちの怪訝そうな声が響き渡る。 「市川の御曹司もわからんな」「どういうことだ?」「入地家と結婚なんて、日本人なら誰もがうらやむのに」「特に市川は爵位がない。この婚約は家の格を挙げる絶好の機会」 「散々言われてる……。針のむしろだぞこれ」 「大丈夫よ、まかせて」 鈴子さん、楽しそうにぱちんとウインク。 大丈夫だろうか、心底不安である。 鈴子さんはこほんと咳払いを一つすると、胸を張って。 「此度の破局におかれましては、わたくしの不徳の至るところにございます。みなさまご存知の通り、我が入地家は神代の頃より畏れ多くも皇室の藩塀としてお支えさせてい
Last Updated: 2026-08-09
Chapter: 4章 12 夜の帳が下り、月がひょっこりと顔を出すようになった時刻になって、 「お掃除終わりました!」「こっちもです!」 どうやら全員の掃除が終了したらしい。壁にかけられている時計を見ると現在六時。たしか七時から記者会見とパーティをやるんだったな。あと一時間しかない。掃除が予想以上に手間取った。まずい。 「よし、次は準備だ! 作る時間はない。鈴子さん、出前を……」 「ぬかりなくてよ? 近所の柳寿司さんから五十人前注文してあるわ」 鈴子さんはそういってふぁさっと前髪を梳く。やたらかっこよかった。 「流石だね。ただ、どう見ても洋風のパーティなのにまさかの寿司なのか」 洋式のテーブルに純白のテーブルクロス。そして立食。なのに食うのは寿司なのか。 しかし鈴子さんは困ったように頬をぽりぽりと掻き、目を反らす。 「洋食屋さんに出前できる量じゃなくて。お寿司だとこういう時便利なのよ」 「そりゃそうだ」 洋食の出前なんて聞いたこともないからな。おかもちに入らないだろうし。 確かに寿司はこういう時便利だ。そばだと高級感がなくてパーティには向かないが、寿司なら格好がつく。まあうちの使用人にやらせたらそばの方を注文しただろうがね。そばっ食いばかりだし。 「でも洋酒くらいは揃えましょう。グラスを並べましょうね」 鈴子さんはそう胃ってピカピカに磨かれたグラスをテーブルに配膳していく。 「寿司に洋酒……うーん、カオスの世界だ」 正直格好がつかない。どうしたものだろうか。 俺が腕を組み、首をひねっていると、おずおずとさつきさんが挙手をする。 「あの、日本酒の方がよろしいのではないでしょうか?」 確かに日本酒なら似合う。よし、これでいこう。だったら座敷の方がよかった気もするが、今更どうにもならないのでこのまま押し通す。和洋折衷だ和洋折衷。日本人らしくて大変結構ではないか。 鈴子さんもそう思ったようで、ぽんと手を鳴らしてくれる。 「じゃあそっちも用意なさって。あと煙草も揃えた方がいいわね。灰皿も並べて!」 「さつきさん、用意しよう」
Last Updated: 2026-08-08
Chapter: 終章 2「もう一度聴かせてよ」 「いいよ」 それからの日々。学校で、家で、あるいは紐育と遊ぶときでさえ、俺はアコを聴いていた。 紐育は怒りもしない。それどころかアコを聴きたがる。 HRが始まる前のつかの間に、俺は紐育と音楽を聴く。そんな日課が出来ていた。 紐育はアコをつけ、音楽を楽しむ。 「やっぱりいい音だよね。八島、他にイヤホンは買うの?」 「買わない。いらない」 「だよね」 ぱちんと紐育がウインクした。 俺は紐育からイヤホンを受け取ると、自分の耳につけて、スマホをタップ。 流れてくるのは、宝石のような、シルクのような、あるいは太陽のようなサウンド。 明るくて、きらめいて、なめらかで、心地よい。 「だってアコの音、こんなに綺麗なんだぜ? 聴いてるだけで涙が溢れてくるんだぜ?」 「わかった。だったらさ」 「……ああ」 俺はこくりと頷いた。 「しかしバイトって大変だな」 俺は紐育の勧めでバイトすることになった。 最初は神社でバイトするのかと思ったが、予想が外れた。ファミレスやスーパーのバイトだと紐育がつきあえない。 ということで、地元の村役場の手伝いというか、ゴミ捨てとか、井戸洗いとか、二十一世紀の今にもそんなものがあるかと驚きを隠せないような仕事で金を稼ぐこととなった。 「ぶつくさ言わない! 黙って仕事する!」 「いてっ! 叩かなくてもいいだろ!」 振り向くと、箒を手にした紐育がいて、彼女は巫女装束をまとい、髪の毛を結っていた。 おうおう、楽そうでいいねえ。 「だってDAP買うんでしょ? アコちゃんに相応しい、最高のDAPを」 「ああ、だってアコが可哀想じゃないか。最高の音を鳴らさせてやらないと」 とはいえ、それなりに音のいいDAPとなると、安くても十万円を超えるのだ。ファミレスのバイトを週五でやっても二ヶ月はかかる。 三十万も四十万もするハイエンド? 無理です。 それを一ヶ月で稼ぐとなると、そらもうキツくて、臭くて
Last Updated: 2026-06-10
Chapter: 終章 1 アコは還った。手のひらの上には鈍色に輝く小さなイヤホンが一つ、窓から差し込む光を反射して、それはまるでダイヤのようだった。 果たして俺は今、どんな表情をしているのだろう。泣いているのか、笑っているのか、あるいは無表情なのか。それすらもわからなくて、ただ、じっと手のひらを見つめ続ける。 と、紐育がにゅっと脇から顔を出して、 「ふふ、八島。いい顔してるよ」 そう微笑みかけた。 何故だろう、その一言を受けて救われたような気がした。 何気ない一言のはずなのに、まるで乾いたスポンジに一滴の雫が垂れたようで、物凄い勢いでそれは吸収されていく。 じわっと、体に染みこんでいく。 「紐育……まあ、ね。アコは……もう、いない」 理解していたはずなのに、納得してアコを還したはずなのに。 いざ口に出してみると、酷く胸が痛んだ。 なのに紐育はカラカラと笑いながら、そっとアコをつつく。 「いるじゃん、そこに」 「……そうだな」 はは、と苦笑した。 すると何故か紐育が俺の前に回り込むと、手を後ろに組んで、申し訳なさそうに眉を落とした。 「実はね、今だから言うけど、アコちゃんにお金借りたっての、あれ嘘なんだ」 「え?」 「ずっと私の家にいたんだよ。お母さんとも事情話して、ね」 ああ、やっぱり。 心の中ではどこか想像していた。覚悟もしていた。冷静に考えればそうだろうなという気もしてきた。 紐育は全てを知っていたのだ。 ただ、だとしたら疑問が残る。 「だったら……」 紐育は窓の方へ視線を移し、俺の机を三回つついた。とん・とん・とん。 「なんでだろうね。多分……いや、いいか」 それで察した。 俺が抱いた疑問は単純で、何故そんなことをしたのか。 そしてそれに対する答えが、うぬぼれかもしれないが、俺のためにやってくれたのだ。 彼女の少し不器用な、思いやりのカタチ。 「……そうか、わかった」 ふっと頬を緩める俺。それで紐育は気
Last Updated: 2026-06-09
Chapter: 4章 9 静寂のはずなのに、ちっとも冷たくなくて、少しも寂しくなくて。 ただただ、暖かい静謐が、俺たちの中に柔らかく漂っている。 そんな春のぬくもりを思わせる世界を切り裂くように、まず俺が―― 「アコ!」 ついでアコが―― 「八島くん!」 互いの力の全てを捧げ、強く抱きしめ合った。 もっとも、その時間は一秒にも満たない。 あっという間に感触が消えていき、アコの姿がまるで霞のように薄れていく。 「ああ、アコが……」 いよいよこの時が来たか。 言いたいことは沢山あった。伝えたい言葉はいくらでもあった。 でも、それはもう叶わない。 「あはは、そろそろお別れですね。あ、じゃあ最後に」 アコが目を閉じる。 そうだな、もう言葉はいらないな。する時間もない。 なら、俺に出来る、最後の思いを―― 「……ああ、実は最後に、これくらいはやっておきたかったんだ」 「じゃ、お願いします」 アコはわかっていた。いや違う。俺のしたいことと、アコがしたいこと。その思いが一致しているのだ。 おそらくは紐育もだろう。だから彼女は気を利かせて部屋を出たのだ。 「わかった」 俺はそう言って彼女と同じように目を閉じて。 ゆっくりと、自分の唇を彼女の唇と重ねていって。 「ん……」 「んんっ……」 アコが消える最後の瞬間まで。 俺たちは、ぬくもりの中に包まれ続けるのだった。
Last Updated: 2026-06-08
Chapter: 4章 8 ゆっくりとスマホを取り出す。スマホにポタアンを装着し、ポタアンのイヤホンジャックにアコ本体を差し込む。 電源を入れ、音楽の再生ボタンをタップする。 その、直後。 音が流れた。アコの音だ。 でも、今までみたいに指で差し込まれた時とは違う。低音も中音も高音もまるで違う。宝石のように澄んだキラキラの高音と、それに負けないパワフルで締まりのある低音。それでいてボーカルは前にしっかりときていて、それは非常に艶があり、エロい。 さらには様々な楽器が超高解像度の画像のようにあますとこなく『楽器』となって生み出され、それは全てが渾然一体となって『オーディオ』を形成している。 まさに、本物のアコの音だ。 そしてそれは、なんというか、 「……凄い、音」 だった。 「何度か私の指で聴かせましたけど」 俺は首を振る。 「いや、違う。全然違うよ。ずっとずっと、いい音だ。なんでだ? 贔屓じゃない。本当に違う。どうして違うんだ?」 「多分それはフィッティングの問題です」 「フィッティング?」 「イヤホンというのはしっかり耳の奥にフィットしないと音が隙間から抜けてしまうんですよ。具体的に言うと低音が。高音はしっかり聴こえるんですけどね」 なるほど、そういうことか。 確かに音そのものは指で聴いた時のアコの音と変わりない。シンプルでありながら重厚。それでいて煌びやかさが同居した気品ある音。 だが細やかな点は天と地ほど違う。そして大きな点も一つ違う。 それが―― 「確かに力強い低音だ。ドスドスして、ギュッとしまってる」 この強い低音が他の音を邪魔するどころかむしろ彩りとなってさらに中高音が引き立って聞こえてくる。 音に連動するように何故だろうか、涙が出てきたのである。 音があまりにも凄すぎて、ぬぐってもぬぐっても涙があふれてくるのである。 アコが嬉しそうに頷く。 「そうです。やはり指だとどうしても隙間が出来てしまいますが、完璧にフィットした私は、最高の音が出せるんです」 「凄い……本当
Last Updated: 2026-06-07
Chapter: 4章 7 それから俺たちは一旦イヤホン屋へと赴いた。 どうせなら神社から直行すればいいのではと思えそうだが、最後にアコを俺の部屋に連れて行って、そして、抱きしめたかったのだ。 まあ、すぐ消えるかと思ったら修理が完了してもアコは成仏しなかったわけだが。 冷静に考えたらそりゃそうだ。だって俺はまだ――アコを聴いていないのだから。 「これが……アコの直った姿」 見てくれは変わらないはずなのに。断線したのをただ直しただけなのに。 どうしてだろう。なんでだろう。 「はい。……どうですか?」 「綺麗だ……そうか、本当はこんな姿なんだね」 不思議な気持ちである。 アコがあはは、と苦笑する。 「といっても私はチタン筐体なので踏んだくらいじゃ壊れないんですけどね。ぶっちゃけ端子が壊れて断線しただけですし」 確かにそりゃそうなんだが、でも、やっぱり。 「でも、何でだろう。違って見えるよ」 「身内びいきですよ。……でも嬉しいです。ありがとうございます」 アコは微笑んだまま小さく頭を垂れた。 元通りとなったアコ本体を彼女に見せつけながら、そっと。 「アコ、聴いてみたい」 「どうぞ、音源はありますか?」 「この日に備えてハイレゾ沢山買ったよ。高いね、一曲六百六十円はエグい」 「ですよねえ」 お陰で今月の食費を思い切り減らさなければならなくなった。大変な事態である。 でも、アコのためならば、アコを聴くためならば、やはり最上でなければ。 と言っても俺には音楽の善し悪しなどわからないからジャンルは適当だ。これについては色々聴いて、いずれ好きなタイプを確立していけばいいだろう。 と、俺の後ろからにゅっと紐育が首を突き出し、 「私も聴きたいな」 そう言ってぺろっといたずらっ子のように舌を出した。 そんな紐育の様を見て、アコがあははと苦笑する。 「勿論ですよ、さ、八島くん」 促され、俺はアコを耳に装着する。アコはシュア掛けではなく普通に耳につけるタイプだ
Last Updated: 2026-06-06
Chapter: 4章 6 神社を出て、てくてくと夕暮れに染まった街を歩きながら、俺たちはちらちらとお互いを見つめ合う。 「八島くん……八島くん!」 今にもだきついてきそうなアコの頭を、俺は優しく撫でる。 「アコ……いいんだ。もう大丈夫だから」 もっとも、倉戸京子と約束し、アコも納得し、俺も啖呵を切ったとはいえ、今更ながら悲しみと不安がぽこぽこと沸騰したお湯のようにわき出てきた。 このまま倉戸京子を裏切って逃げ出してしまおうか。あるいは開き直ってしまおうか。そんな考えがわずかに脳裏をよぎる。 「ただ、アコ……いいんだな?」 「……はい」 ためらいを感じた。でも、彼女は承諾を示した。 なら、その意志は尊重しなければならない。 でも、そんな気持ちさえも責任を押しつけるような、卑怯者の逃避であって、それが俺に自己嫌悪を与えていく。 ただ、それを口にすることは憚られた。 騙すなら、最後まで騙すべきだから。 「わかった。じゃ、行こうか」 俺はぽんぽんとアコの背中を叩く。 そんな俺たちをやりとりを見ていた紐育が、沈みゆく太陽をバックに、少しだけ申し訳なさそうに訊ねてくる。 「……私も、行っていいんだよね?」 「「勿論」」 家につき、部屋に戻ってから、俺はアコにすっとイヤホンを見せつける。 鈍色に光る、筒状のハウジング。金属の冷たさが夕日に照らされ、ルビーのように輝いている。 「アコの本当の姿は、これなんだよな」 「はい、これなんです」 アコはしっかと頷いた。寂しそうに、懐かしそうに。 俺は頬を静かに緩める。 「そうか……」 「大事にして、くれますよね?」 「勿論だ。ずっとずっと、愛用する」 言いながら、俺は強く頷いた。 アコが嬉しそうにぱん、と手を鳴らす。 「わあ、それはよかったです」 そして俺から顔を逸らし、窓から夜へ移行する藤色と薔薇色の混ざった空を見つめながら、 「お別れじゃないんですね」 と言った
Last Updated: 2026-06-04