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ゆこ
Author
Novels by ゆこ
結婚式の端っこで、君と乾杯を
年の差
裏切り
三人称
現代
CEO・社長・御曹司
恋愛
29歳のOL・瑠衣は、結婚式を一か月後に控えていた。しかし婚約者の雅之が妹・真衣を妊娠させたことで婚約は破棄。結婚式まで妹に乗っ取られ、両親からも「赤ちゃんの部屋が必要だから」と家を追い出されてしまう。居場所を失った瑠衣が出席したのは、自分のものだったはずの結婚式。そこで出会ったのは、親戚中から変人扱いされる独身の叔父・相沢灯だった。披露宴の片隅で交わした会話をきっかけに、灯は瑠衣へ一軒の空き家の鍵を差し出す。だがその叔父には、誰も知らない秘密があった――。結婚式の端っこから始まる、年の差再生ラブストーリー。
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Chapter: 2話「人生最悪の日、乾杯」
招待メッセージを三回読んで、やっと気づいた。 "披露宴開始 13:00" 式の時刻が書いていない。私は披露宴にしか呼ばれていない。 駅から会場まで、十分ほど歩いた。招待状を持って、一人で歩いた。 歩いて、何度か立ち止まった。 (あれ、なんで私こんなことしてるんだろう) もっと怒っていいはずなのに、邪魔しようと考えてもいいはずなのに。 それより心にあるのは"無"だった。 感情より足が動くことがあるんだな、と瑠衣は自分自身に感心していた。 (一番バカなのは、私かもしれない) 受付に並んで、順番が来た。 「江品家で招待されている、江品瑠衣です」 スタッフの女性が名簿を確認した。一瞬だけ、表情が固まった。ほんの少しだけ。しかしわかった。 「新婦様より、ご祝儀は不要とのご連絡を承っております」 「……そうですか」 後ろに並んでいた女性が、隣の友人に何か囁いた。 聞こえた。含み笑いまで聞いてしまった。自分の耳の良さが恨めしい。 足は止めなかった。 親族控室の前まで来て、ドアに手をかけようとしたところで、スタッフに呼び止められた。 「申し訳ございません。こちらはご利用いただけません」 「私は親族ですが」 「新郎新婦からのご指示ですので」 スタッフは丁寧に頭を下げた。感情のない、訓練された角度だった。 ちょうどそのとき、ドアが少し開いた。中から笑い声が漏れた。真衣の声だった。母の声だった。 ドアは閉まった。 三十一日後に挙式予定だった人間が、結婚式の親族控室に入れない。我ながら、すごい状況だと思った。 案内された席は、披露宴会場の一番端の円卓だった。 席次表が置いてあった。自分の席を確認して、周りの名前を見た。 大学の友人たちの名前。高校の同期の名前。会社の同僚の名前。 全員、欠席だった。 「行けない」と言ってきた子はいなかった。全員「行かない」という返信だった。みんな、怒っていたのだ。私の代わりに。 胸の奥が少しだけ痛んだ。怒っていてくれた人たちが、この会場にいないことが。 同じ円卓に、初老の男が一人いた。 安物のスーツ。古い革鞄。片耳にイヤホン。スマホの画面を見ている。よく聞くと、電子書籍の読み上げ音声が流れていた。 周りが花とシャンデリアと白いテーブルクロスで埋まっ
Last Updated: 2026-06-17
Chapter: 1話「婚約破棄の夜」
|瑠衣《るい》は今日も仕事で帰りが遅くなった。 "|江品《えしな》"という表札の門をくぐった時に、違和感を感じた。実家なのに、自分が住んでいる家なのに、何か違う感じがした。そしてそれは、玄関に入った時に確信した 玄関に靴が多い。 父のスリッパ、母のパンプス、妹の真衣のスニーカー、それから男物のローファーが二足。 仕事帰り、鍵を回す手が一瞬止まった。いやな予感というより、答えの見えた数式を解く前の感覚に近かった。 リビングのドアを開けると、全員いた。父、母、|真衣《まい》、婚約者の|深内雅之《ふかうち まさゆき》、そして見覚えのある顔が二つ——雅之の両親だ。テーブルを囲んで座っている。誰も笑っていない。誰も瑠衣を見ていない。 「座れ」 父が言った。椅子を引いて座った。 「驚かないで聞いてね」 母が続けた。 驚かないで、と言う前置きを使う人間は、たいてい相手が驚くことを言う。瑠衣はコートも脱がないまま、正面を向いた。 最初に口を開いたのは真衣だった。 「お姉ちゃん、ごめんね」 そう言いながら、無意識に腹に手を置いた。 「赤ちゃん、できたの」 「そうなんだ」 「雅之さんとの」 沈黙。 テーブルの上に湯呑みが並んでいた。全員分の湯呑みが。瑠衣の分はなかった。 雅之が話し始めた。視線をテーブルの一点に固定したまま、用意してきた言葉を読み上げるように。 「本当に申し訳ない。でも責任を取らなきゃいけない」 「子供には罪がない」 父がさらっと告げた。 「まず赤ちゃんを優先しないと」 母も当たり前のように流した。 全員が正しいことを言っていた。 反論できる言葉がひとつもない。それが不思議なほど、反論できる言葉がひとつもなかった。 「私との結婚は」 「ごめん」 雅之はそれだけ言って、また黙った。 真衣が補足した。顔は申し訳なさそうだったが、声は明るかった。 「でも結果的には良かったと思うんだ。だって赤ちゃん来てくれたんだし」 悪意がなかった。 それが一番怖いことだと、瑠衣はこの瞬間に理解した。 「式なんだけど」 母が口を開いた。まったく悪いという意識のない声色だった。 「そのまま使おうと思うの」 「何を」 「式場よ」 「キャンセル料も馬鹿にならないから」 母の声に父が重
Last Updated: 2026-06-17
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