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第452話
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クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚！ 第466話
「それじゃあせっかくの遊びの気分が台無しになっちゃうよ。私が機嫌悪くなったら、口が勝手に余計なこと言っちゃうかもね？」ここまであからさまな脅しに近い言い方、さすがに鈍感でも気づく。ましてや京弥は馬鹿じゃない、伊澄の言いたいことなんて、とっくに分かっていた。だが、彼はそんな彼女のわがままを受け入れるつもりはなかった。「約束は『ご飯を食べる』、それだけだ」「『一食だけ』なんて言ってないけど？」伊澄は言葉遊びのように、京弥に絡んでくる。それを聞いた瞬間、京弥の眉間にしわが寄った。不快感を隠さず、立ち上がると、彼はその場を離れた。「勝手にしろ。もう会社に戻る」彼が一番嫌いなのは「脅すような言い方」をされることだった。そして今の伊澄は、まさにその地雷を踏み抜いた。この女、ずいぶんと度胸があるな。京弥は心の中でそう呟きながら、後ろを振り返ることなく去っていった。一方、伊澄はその背中を呆然と見送っていたが、すぐに切り替えた。大丈夫、大丈夫。焦らず少しずつ、茹でガエル作戦で行けばいい。そうすれば、いつかきっと京弥の心の中に入り込める。なぜか彼女は妙な自信に満ちていた。外の人間たちが、自分と京弥の関係を見たら、きっと羨ましがるに違いないと。もし紗雪が彼女のそんな考えを知ったら、きっと拍手喝采していたことだろう。この女と加津也、ほんと、自惚れ屋同士でお似合いだ。食事は険悪な雰囲気で終わったが、伊澄の目的はちゃんと達成された。彼女はスマホのアルバムを開き、京弥とのツーショットを見ながら眉を上げた。そして決めた。この写真、絶対いいタイミングで紗雪に送ってやる。だって、こういうのが一番彼女に効くんだから。紗雪が不快になるなら、それで自分は満足。もはや彼女への憎しみは、新たな段階に達していた。その頃、紗雪はちょうどレストランで食事中。突然、大きなくしゃみが飛び出した。その様子に、隣の日向は目を丸くした。「どうしたの？風邪？」「いや、喉がちょっとおかしいだけ」紗雪は真剣な表情で続けた。「それに......誰かが、私の悪口でも言ってる気がする」「えっ、マジで？」日向はこういう話、わりと信じるタイプだった。それに、こんなに表情豊かな紗雪は珍しくて、な
クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚！ 第465話
この言葉を聞いて、加津也は初芽を引き留めようという気持ちをようやく諦めた。それどころか、心の中ではほんの少し喜びさえ感じていた。まさか初芽が、二人の未来のことを本気で考えてくれていたなんて。「そっか......邪魔して悪かった。もう行ってよ。俺もそろそろ会社に向かうから」その言葉を聞いた瞬間、初芽はまるで逃げるように、その場を後にした。一切の迷いもなく、慌ただしくその場を離れたのだった。だが、加津也はまだ一人で感慨にふけっていた。新しくスタジオを立ち上げたばかりなら、確かに忙しいだろうし、そう簡単に稼げるもんじゃないんだよな、はぁ。しかし現実には、初芽はすでにいろんな場所へ出かけており、その資金はすべて加津也の金でまかなわれていた。あの頃、彼女のスタジオはまだ立ち上がっておらず、ただあちこちを気ままに回っていただけだった。そしてその「お出かけ」から帰ってきた頃には、自然とスタジオを開設する流れになっていたのだ。本人としても、まさかこうなるとは思っていなかった。だが、今となっては最大の想定外は、間違いなく加津也という存在そのものだった。初芽が去った後、加津也も身支度を整えて会社へ向かった。最初、受付の女性は彼のことに気づかなかったが、後ろの同僚たちが「西山さん」と声をかけるのを聞いて、ようやく彼だと認識した。「西山さん、何階に行かれますか？」受付の女性が丁寧に尋ねる。だが加津也は顔を上げずに答えた。「いいよ。自分で行くから」その一言で、受付は未練がましくも、自分の席へと戻っていった。ああ、もったいない。こんなにキメてる西山さん、滅多に見られないのに。普段の彼はだらしない格好ばかりで、今日みたいにきちんとした姿は初めてだったから。......「京弥兄、これ食べてみて、すっごくおいしいんだよ！」京弥の表情は相変わらず冷めていたが、伊澄はご機嫌で、彼に次々と料理を取ってあげていた。その様子に、京弥は思わず手を止め、その肉の一切れをじっと見つめる。唇は固く結ばれ、どう反応すべきかわからなかった。ここで拒絶したら、相手のプライドを傷つけるだろうか？でも、彼には潔癖症があり、他の女が箸で取ったものは受け付けないのだ。伊澄はさらに促す。「早く食べてよ、京弥
クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚！ 第464話
彼女は少し呆れて、このまま別荘を出て行こうかとすら思った。一方、加津也は意外そうに目を輝かせながら初芽を見つめた。「なんでここに？」初芽は手に持っていた袋を軽く持ち上げて見せた。「この前、スタジオに忘れていったコート。時間が空いたから、ここまで届けに来ただけ。まさか中にいるとは思わなかったけど」加津也の目はキラキラと輝いていた。「えっ、コートのためにわざわざ？」初芽は眉をひそめた。「別におかしいことじゃないでしょ。ちょうど近くまで来てたし、今日特に予定もなかったから」それでも加津也はどこか信じきれない様子で、内心は嬉しさで満たされていた。「ほんとに？だってこの前君に会いに行ったとき、すごく忙しいって言ってたじゃん？」彼が身を寄せてきた瞬間、さっきシャワーを浴びたばかりの彼の香りが初芽の鼻先をくすぐった。そのせいで、彼女の耳のあたりはほんのり赤く染まり、口を開くときには少し声が上ずっていた。「そ、そのときはクライアントがいたの、見たでしょ？ほんとに忙しかったの。でも今日はたまたま時間が空いて、届けに来ただけだから」「おお、そっか。ありがとな！」初芽自身も、今の自分と加津也の関係がよくわからなかった。何かおかしい。でも、それを言葉にするのは難しかった。特に、今こうしてちゃんと身なりを整えた加津也を見ると、確かに、イケメンであることは間違いなかった。お金持ちでバカってのも一因だけど、顔が良いってのはやっぱり強い。そう思いながらも、初芽は立ち上がった。これ以上ここにいるのはまずい。「初芽。もう帰るの？この前の話、まだちゃんと話し合ってないよね？」「初芽」という声を聞いた瞬間、初芽の肌には鳥肌が立った。以前は何とも思わなかったが、今ではとにかく気持ち悪く感じてしまう。あの頃どうやって耐えてたんだろう......「もう十分言ったでしょ。いくら話しても、結局は同じよ。帰るわ」初芽が本当に帰ろうとするのを見て、加津也はあわてて声をかけた。「ちょ、ちょっと待ってよ、行かないで！」せっかく決めたヘアスタイルに、このタイミングで初芽が来たんだから、これは彼の「顔面偏差値」を活かす絶好のチャンスじゃないか。ここで見せ場を逃すわけにはいかない！初芽は少しイラついていたが、加
クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚！ 第463話
今の彼は、まるで飼い主に捨てられた犬のようで、特にこれといった役にも立たず、脅威になるような存在でもなかった。だから紗雪は少しも怖がることなく、ただただ鬱陶しいと感じていた。すると日向が、落ち着いた口調で言った。「午後は一緒にクライアントと会う予定だったから、ついでに一緒にご飯でもどうかなと思って」「でも今の......ちょっと面倒ごとに巻き込まれてる感じ？」紗雪はその視線を追って、ふと見ると、そこには信じられないという表情を浮かべた加津也の姿があった。加津也自身、どうして紗雪のまわりにはこんなにも優秀な男たちが集まるのか、理解できずにいた。彼はじっと日向を見つめ、相手の服装も顔立ちも、自分よりはるかに上だと気づいてしまう。それに、日向の紗雪を見るその視線。同じ男として、それがどういう感情を含んでいるのか、加津也には痛いほどわかった。それは紛れもなく「好意」、いや、「独占欲」を含んだ視線。かつて彼自身が紗雪に向けていたのと、まったく同じものだった。加津也は日向を指差しながら問いただした。「紗雪、こいつは誰だ？」その物言いに、紗雪は思わず吹き出しそうになった。「は？何言ってんの？何様のつもり？」加津也の思考回路には、もはや呆れ果てて言葉も出てこない。どこから湧いてくるの、その自信。何様？その様子を見ていた日向の目には、からかうような光がよぎった。あの冷静な紗雪が、こんなに表情豊かになるなんて、彼にとっては初めてだった。だが、加津也は確信に満ちた声で言い放った。「忘れたとは言わせないぞ。俺たちは3年も付き合ってたんだ。お前のそばにいる男がどんなやつか、それを知る権利くらい俺にだってあるだろ？」紗雪は目を回し、小物の相手をするのも馬鹿らしくなった。「日向、レストランに行こう。こういう人間と話してても、時間の無駄よ。まともな会話なんてできっこない」日向はうなずいた。彼もまったく同じ考えだった。「ああ。会社の近くにもう予約してあるから、そのまま行こう」そう言って、ふたりは連れ立ってその場を離れようとした。誰にも相手にされずに取り残された加津也の胸には、どうしようもない虚しさが広がった。一体どうなってるんだ。前はあのチャラ男みたいなやつだったのに、もう新しい男
クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚！ 第462話
言い終えると、紗雪は大股で前に進もうとした。今は急いで食事を済ませなきゃいけないし、午後には日向と一緒にクライアントに会う予定もある。こんなところで加津也と揉めている暇なんてない。ところが次の瞬間、加津也が彼女の手首を掴み、すぐに声を発した。「ちゃんと話せないのか？俺、最近ほんとにしんどくてさ......ただ少し話したいだけなんだ」「消えてってば」紗雪は冷たい声で言い放った。「あんたのことなんて、1ミリも興味ないわ」彼女の顔には、加津也に対する苛立ちがありありと浮かんでいた。だが、加津也はこのところ失敗続きだった。しかも父親から「紗雪はとても優秀な子だ」と言われた言葉が、彼の頭の中をずっとぐるぐるしていた。今の彼の紗雪を見る目には、単なる好意ではなく、尊敬や憧れの色も混じっていた。彼女のようになりたいと、本気で思っていたのだ。「ほんとに......ただ話がしたいだけなんだ」加津也の声には、どこか哀願するような響きすらあった。だが、紗雪からすれば、それはただの滑稽な冗談でしかなかった。は？この人、まさか自分がまだ慰めてもらえると思ってるんじゃないよね？こっちはむしろ、刑務所に放り込まなかっただけ感謝してほしいんだけど。紗雪は大きく目を回し、冷たく言い捨てた。「でも私から話せるものは何もないわ」「加津也、あんたもいい大人なんだからさ、お願いだから『お母さんどこ？』って言ってる子供みたいなことするのやめてくれる？」紗雪は眉をひそめた。「子供は家に帰りなさい。外でウロウロしないで。他人にあんたのバカが伝染したら困るよ」加津也は怒りに震え、言葉が出てこなかった。今の紗雪は、会話の一言一言がすべてトゲのある刃のようだった。......けれども、「紗雪、なんで......どうして俺たち、こんな風になっしまったんだ？」「昔の紗雪は、こんな人じゃなかったのに......それに先に俺にアプローチしてきたの、紗雪だったじゃん......」無精ヒゲに疲れ切った顔で訴える加津也の姿を見て、紗雪は心底後悔した。あの時の自分は、ほんとに見る目がなかった。「そうよ、昔の私はバカだった。けど今は目が覚めたの。もうあんたとは何の関係も持ちたくない。だから、もう私の世界から消えてくれる
クズ男と初恋を成就させた二川さん、まさか他の男と電撃結婚！ 第461話
彼が我に返ったとき、ちょうど紗雪の含み笑いのような美しい瞳と目が合った。「何してるの？また牢屋に入りたいわけ？」その一瞬、加津也の頭は真っ白になり、何を言えばいいかすら分からなかった。紗雪は、そんな彼のだらしない姿を見て、思わず笑い出しそうになった。まだそんなに時間経ってないのに、なんでまるでどこかから逃げてきた難民みたいになってるわけ？さすが刑務所、あそこは人を鍛える風水でもあるのかしら。でも......何かおかしい。紗雪の記憶では、加津也は数日も経たずに釈放されてたはず。いくらなんでも西山家の御曹司。西山父が息子にあんな苦労をさせるわけがない。彼女の皮肉に、加津也の顔は真っ赤になり、頭の中は絡まってしまったようで言葉が出てこない。「べ......別に大したことないよ......」加津也は、紗雪を前にして、生まれて初めて劣等感を覚えた。かつての自分は、自信満々で、外を歩けば誰もが頭を下げるような存在だったのに。なのに今、ただ顔を合わせただけで、なんでこんなにも萎縮してしまってるんだ？自分でも信じられない。これが本当に、今の自分なのかと。紗雪は呆れたように目をそらして言った。「用がないならどきなさいよ。邪魔なんだけど」彼女の態度は冷たく、加津也に対して一片の優しさもなかった。まったく、今日は厄日だわ。最悪なものと出くわすなんて。加津也は拳をぎゅっと握って反論した。「なんだその言い方は」「今ので怒った？」紗雪は眉をひそめ、腕を組んだまま加津也を見据えた。「私の会社の前に来て、不吉な気配振りまいて、私を不快にさせて、挙げ句の果てにお茶でも出してもらえるとでも思った？」「少しは頭使ったら？妄想ばっかしてんじゃないわよ」そう言って、彼女は自分のこめかみを指でトントンと叩いた。その仕草に、加津也は恥ずかしさと苛立ちを感じた。彼女の言いたいことなんて、分かりきってる。っていうか、待てよ。どうして自分はこんなに自然に紗雪の言葉の意図が理解できたんだ？それに、どうして彼女を引き止めたんだ？こんなことして、自分に何の得があるっていうんだ？考えてみても答えは出なかった。紗雪は、もう付き合っていられないとばかりに言い捨てる。「用がないならどいてよ
